こんにちは、コミュトレインストラクターの冬木しょうこです。
たまにメンバーさんから「職場が変わったことで、これまで慣れ親しんだコミュニケーションの取り方が通用しなくなった」とご相談いただくことがあります。
たとえば、以前ご相談いただいた30代男性の方は
「小さな会社から大企業に転職したが、周囲の人は合理性ばかり求めてきてややドライに感じる。これまで人情を大事にする職場で仕事してきたので、新しい職場でどう対応したらいいか分からない。また、会議でも説得力のある発言ができない」
という戸惑いを打ち明けてくださいました。
彼だけでなく、職場環境が大きく変わって周囲についていけていないという現実にプレッシャーを感じている方は少なくありません。
プレッシャーを感じるので「自分を変えないといけないのは分かっているけれど、何をどう変えたらいいか分からない」と焦ってしまう方もいらっしゃいます。
では、これまで培ってきたコミュニケーションの取り方が通用しない新しい世界に来てしまった場合は、どうしたらよいのでしょうか。
結論から言うと「対応法を切り分けて考える」ことです。
具体的には「変えるべき対応と、変わらない対応を明確に切り分けて別々の対策をとる」ことが重要です。
課題や状況を十把ひとからげにとらえて「全てを変えなければいけない」と考えると、自分を全否定してしまうことになるので非常につらいのですよね。
しかし、実際はそこまで大きく変化する必要はありません。たとえば、人間は、個人の性格にかかわらず本質的に同じ習性をもっているので、それは逆に相手によって変えない方がいいのです。
ということで、今回は「職場環境が大きく変化したときの対処法」についてご紹介したいと思います。
特に、コミュニケーションという領域で対応の変化を余儀なくされた場合に、どう考えて行動していけば変化にスムーズに対応できるのかを、みなさんと共有したいと思います。
ぜひ、本記事を読み終えた後は「新しい環境であっても、自分の努力次第でいくらでも適応していける」という希望と自信を得ていただけると嬉しいです。
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目次
能力は置かれた環境に依存する
まず前提として押さえておくべきポイントは、能力には「環境依存性」があるという事実です。
知性発達科学者である加藤氏は、能力の特性を以下のように説明しています。
「例えば、転職をし、以前の会社ではリーダーシップ能力をうまく発揮できていたのに、新しい職場では、なかなかリーダーシップ能力をうまく発揮することができなかった、というような経験です。(略)その理由を端的に述べると、私たちの能力は特定の状況において発揮されるからです。 つまり、私たちの能力は、置かれている環境などの特定の状況の中で磨かれ、その状況の中で発揮されるものなのです。能力のこうした特性のことを「環境依存性」と呼びます。」(「成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法」加藤洋平)
端的に言うと、「前職でコミュニケーションがうまくとれたからといって、現職でも同じようにその能力を発揮してうまくやっていけるとは限らない」ということですね。
例えば、人情を大事にしてきた職場に長く在籍していたなら、人間心理の機微や感情配慮には強くなるでしょう。
しかし、人情よりも論理性や合理性を強く求められる職場に適応するコミュニケーションの取り方とは異なるので、そのままではうまく変化に適応しきれないのは当然といえます。
これまでの職場環境でうまくやれていた方ほど、新しい環境で同様に能力を発揮できなくなってしまうと、原因が分からないもやもや感を感じたり、自分の自信の拠り所をすっぽり失ったような気持ちになったりする人もいるかもしれません。
しかし、そもそも能力には環境の依存性があるので、能力を発揮できないという状況は、なんら特殊なことではないのです。
💭 「良い人間関係を築くための基本的な考え方」については、こちらの記事をご覧ください
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「変えるべき対応」と「変えない対応」を切り分けて考える
では、どうすれば新しい環境に適応していけるようになるのでしょうか。
よくやりがちなのは、焦って「あれも、これもできない」と課題だらけに感じてしまうことです。向上心が高い方ほどそう思ってしまいがちですが、その考え方はあまりお勧めできません。
むしろ「変えるべき対応」と「変えない対応」を切り分けて考えることが重要です。
変えるべきところとは「相手によって変えるべきコミュニケーションの仕方」、変わらないところは「相手が誰だろうと変えないコミュニケーションの仕方」という意味です。
相手が誰だろうと変わらない対応とは、「人間の本質に沿った対応」を指します。
たとえば、私たち人間がもつ1つの習性として「自己の重要感を満たそうと渇望している」というものがあります。
「人から褒められたい」 「認められたい」 「相手から必要とされたい」 「受け入れられたい」 |
という気持ちですね。
この気持ちは、人によって表現や程度の違いはありますが、誰しもが必ずもっている本質的欲求の1つです。
このように、人間の本質は相手の性格や生い立ちには関係しないので、その点に沿った対応の仕方は変えなくてもいいというか、むしろ変えるべきではありません。このように、一口に対応法といっても、変えるべき対応とそうでない対応があります。
ビル・ゲイツは「問題は切り分けよ」と述べていますが、自分にとって大きすぎて何から手を付けてよいか分からない問題は、このように2~3分割くらいして小さくすることで、対処できる大きさになります。
さて、問題を切り分けて考えると、どのような分け方になるでしょうか。
例えば
「新しく入った企業では、人情よりも合理性を重視していてドライだと感じる」という課題があれば、図を使って以下のように切り分けてみます。
変えるべき対応 | 変えない対応 |
・たわいない雑談の量を減らして、ファクトベースの発言量を増やす
|
・相手に興味関心をもとうとする
・相手に自分から気持ちよく挨拶する ・相手に無表情ではなく笑顔で接する |
この例のように、どんな環境の変化に置かれても、「変えるべき対応」と「変えない対応」を切り分けることが重要です。
なお、「変えるべき対応と変えない対応の境目はどこか」という疑問が聞こえてきそうですが、身もふたもないことを言うと、状況に依るので、一概にこうとは言い切れません。
ただし、
「上司に対応する報連相」「同僚との雑談」「相手に対する依頼の仕方」「会議での発言の仕方」など
状況に応じたコミュニケーションの定石はあります(コミュトレでも体系的に扱っています)ので、この辺は該当分野に関する知識を蓄積していただくことが一番です。
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まずは「人間だったらほとんど全員がされて嬉しいこと」を徹底的に実行する
切り分けたあとは、「変化しない対応法」を徹底的に実行しましょう。
実際、私たちコミュトレスタッフも、日々多種多様な社会人の方と接する中で、これまで会ったことないタイプのお客様と接する機会も多々あります。
そのときに、私たちがまず大事にしているのは、
変に相手のタイプに細かく合わせすぎずに「人間だったらほとんど全員がされて嬉しいと感じることを実行する」ことなのです。
たとえば、私たちが一対一の個別コンサルティングを行うときに「直感的な方」と「超合理主義の方」という真逆のタイプの方がいらっしゃることがあります。
その場合、慣れていないコンサルティングスタッフだと、相手の表面上の性質に惑わされて「どうしよう」と迷ってしまいがちなんですよね。
確かに、相手に100%合わせようと思うと、話し方や言い回しもかなり気を遣います。
しかしそこまでしなくても、意外にも「笑顔で接する」「良き理解者になる」など『人間の本質的欲求』を満たす行為を徹底して実行すると、タイプに関係なく、心を開いてくださることが多いのです。
このように、これまで自分が慣れ親しんできたタイプと異なる相手とコミュニケーションをとらざるを得なくなった場合、焦る必要はありません。
人間の本質を知識として頭に入れ、それに沿った行動をとることで、相手の性質に惑わされてしまうことがかなり減ります。
(人間の本質については、紙面の関係上、別の記事でも取り扱いたいと思います)
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まとめ:環境の変化には「切り分ける」思考法で対応する
いかがでしたでしょうか。
今回の記事でお伝えした内容は、長い仕事経験を通じて、ほとんどの方にとって必ず一度は経験する「職場環境の大きな変化」に対する対応法を解説しました。
最後に、簡単にまとめましょう。
◆能力には「環境依存性」があるため、これまでの環境で上手く発揮できていた能力も、環境が変わると発揮しきれなくなることがある◆職場環境が大きく変わった時に、「自分を全て変えなきゃ」と思わず、変えるべき対応と変えない対応を切り分ける◆まずは人間の本質に沿って「人間だったらほとんどの人がされて嬉しいこと」を実践する
特に「切り分ける」という発想は、自分を全否定せずに済むので、精神バランスを保つうえで非常に役立ちます。
ぜひ、仕事やプライベートにお役立ていただけると嬉しいです。
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