ビジネススキル基礎

コミュニケーション能力とは?10万人のデータ分析とENDCOREモデルで一挙公開!

コミュトレ編集部

コミュニケーション能力というと、なんとなく「話す力」と想像しますよね。

 

しかし実際は、普段私たちが生きる中で発揮されるコミュニケーション能力は、基礎能力と応用能力の集合体なんです。

 

そのため、やみくもに能力向上を考える前に、まずはコミュニケーション能力の全体像をつかみましょう。

 

そこで本記事では、「そもそもコミュニケーション能力とは、どんな能力を指すのか?」について、心理学とコミュトレのデータをもとに、1つの答えを提示したいと思います。

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1.コミュニケーション能力研究の歴史

まずは、そもそもどのような過程を経て、コミュニケーション能力の研究が進んできたのかを紐解きましょう。

 

人文科学におけるコミュニケーション能力の研究は、1970年以降から本格的に進みました。しかし、幅広い領域で研究がおこなわれており、様々な意味合いを指していました。

 

例えば、異文化コミュニケーション学では、コミュニケーションスキルは「先方に特有の文化に適応するための振る舞い方」と定義されていました。そのため、コミュニケーション能力を考えるときは、主にその国特有の文化や国民性が考慮されていました。

 

一方、社会心理学では、文化の違いはあまり考慮せず、個々の状況において適切な対人関係を構築するための能力全般、と広く定義していました。また、言語・非言語(表情、声色など)による会話を扱う社会言語学ではより具体的に、コミュニケーション能力を「話し手」や「聞き手」となったときに発動する能力として扱っています。

 

このように、学術的観点でみると「コミュニケーション能力」という言葉には、異なる階層の定義が雑多に含まれているのです。

 

そこで、「コミュニケーション能力」という言葉に含まれる要素を統合する試みが行われるようになりました。その先駆けとなるのが、立命館大学 教育開発推進機構 藤本学教授によって発表されたENDCOREモデルです。ENDCOREモデルは2007年に発表され、その後の追加研究によって発展し、2019年に最新版が発表されました(2021年4月現在)。

 

※参考論文:

コミュニケーション・スキルに関する諸因子の階層構造への統合の試み(2007)

看護学生のコミュニケーション・スキルの特徴と推移(2019)

 

コミュトレが考える「コミュニケーション能力」は、このENDCOREモデルを基礎としています。

 

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2.ENDCOREデモルにみるコミュニケーション能力の全体像

ENDCOREモデルでは、社会生活を円滑に営むためのコミュニケーション能力を、以下3カテゴリーに大きく分類しています。

●文化・社会に適応するために必要な能力:ストラテジー 例)日本人がアメリカ社会に溶け込むために、アメリカ人に倣って積極的に自己主張する●個々のシーンにおける対人関係を構築する能力:ソーシャル・スキル 例)会議のシーンで、説得力のある意見を出す●言語・非言語による会話を適切に行う能力:コミュニケーション・スキル  例)自分の考えを的確な言葉で表現できる

 

これらは、以下の図のように、「スキルの難易度」「能力が通用する幅(汎用性の高さ)」で整理できます。

 

縦軸の「難易度」は、上に行くほどコミュニケーションの難易度が上がります。

横軸の「汎用性」は、軸の端に広がるほど、多様なシーンに対応できることを意味します。

 

このように、コミュニケーション能力の構成要素は難易度と汎用性によって説明され、扇の中心から外側に向かってレベルが上がるといえます。

 

また、基本的なコミュニケーション・スキルは、黄色箇所の6カテゴリーがあります。では、それぞれのスキルの特徴を、具体的にみていきましょう!

 

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感情をコントロールする『自己統制スキル』

自己統制スキルは、自分の感情や行動をうまくコントロールする能力を指します。

 

例えば、自分の考えの誤りを指摘されたときに委縮したり、攻撃的になったりすると、自己統制スキルが低いとみなされます。自己統制スキルは、あらゆるコミュニケーション・スキルの最も基本に位置しています。そのため、コミュニケーション能力をスムーズに習得する際は、自己統制スキルが一定レベル以上あることが前提となります。

 

自己統制スキルは、以下4種類にさらに分解されます。

 

考えを言葉にする『表現力スキル』

表現力スキルは、自分の考えや気持ちを曖昧なままにせずに、相手に理解できる言葉で伝えられる能力を意味します。

 

よくコミュトレでは「上手く伝えられない」とご相談をいただきますが、この表現力スキルが低い場合、「意見がうまくまとめられない」「適切な言葉が見つからずに口ごもってしまう」「相手に誤解されてしまう」といったような現象が生じます。

 

この段階ではまだ「説得力」の領域まではいきませんが、上司への報告・連絡・相談や、会議での発言、他部署との連携など、日常的な意思疎通を円滑に行う上で基盤となります。

 

表現力スキルは、以下4種類にさらに分解されます。

 

意図をくみとる『解読力スキル』

解読力スキルは、相手の伝えたい考えや気持ちの意図を正しくくみとる能力です。

 

具体的には、相手の発言やしぐさから「どんなことを考えているのか」「どんな気持ちになっているのか」を察する能力といえます。解読力スキルが高い人は、雑談の場面で空気を読んだり、相手の話を聞いて「もしかしたら、こういうことを伝えたがっているのかもしれない」と察することに長けています。

 

解読力スキルは、以下4種類にさらに分解されます。

 

聞き手の納得を得る『自己主張スキル』

自己主張スキルは、自分の意見や立場を相手に受け入れてもらえるように主張する能力を指します。言葉だけ見ると少し自己中心的なニュアンスがありますが、いわゆる「説得力」のことを指します。

 

ビジネス上で成果を上げるうえで、自己主張スキルは避けては通れないといっても過言ではありません。コミュトレでいえば、年次や役職が上がって、会議出席・プレゼンテーションの機会が増えてきた方から、特によくご相談を受ける能力です。

 

自己主張スキルは、以下4種類にさらに分解されます。

 

相手を尊重する『他者受容』スキル

他者受容スキルは、相手を尊重して相手の意見や立場を理解する能力です。普段の会話で自分の話をするよりも相手の話をよく聞いたり、共感などのリアクションをとったりする方は高くなる傾向にあります。

 

一般的に、人間関係はお互いの共通点に着目することによって自然と構築されます。しかし、逆を言えば、共通点が見つからない人とはなかなか距離が縮まらないともいえます。

 

他者受容スキルは、共通点ではなく相違点に対しても興味・理解を示すことを指します。そのため、前述の「自己主張」と並んで、プロジェクトなどで関わる人の多様性が増すごとに、より強く求められるようになります。また、次に説明する「関係調整スキル」の土台ともなります。

 

他者受容スキルは、以下4種類にさらに分解されます。

 

良好な関係を維持する『関係調整スキル』

関係調整スキルは、周囲の人間関係にはたらきかけ、良好な状態に調整する能力です。先に説明した「自己主張スキル」と「他者受容スキル」のさらに上位に位置しています。

 

ビジネスにおいては、人間関係が必ずしも良好なときばかりではありませんよね。意見や価値観のすれ違いによって対立が生じてしまうこともままあるでしょう。そのときに関係を修復させることも関係調整スキルに含まれます。この能力が高い人は、組織内の対立を解消できるため、非常に重宝される存在となります。

 

関係調整スキルは、以下4種類にさらに分解されます。

 

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ビジネスコミュニケーション能力と「コミュニケーション・スキル」の関係

ここまでは、ENDCOREモデルの中で、基礎的能力と位置付けられている「コミュニケーション・スキル」の構成要素を詳しくみてきました。

 

しかし、おそらく本記事を読む大半の方は、「もっと仕事で成果を出したい」「仕事仲間から認められたい」と考えていることでしょう。

 

コミュトレでは、そのようなビジネス上で必要となるコミュニケーション能力を「ビジネスコミュニケーション能力」と呼んでいます。ビジネス上で周囲が認めるパフォーマンスを上げるためには、業務上の専門知識はもちろんのこと、自分の意見を相手に理解していただき協力していただく必要がありますよね。そのために発揮される対人能力全般を指します。

 

ビジネスコミュニケーション能力は、社会人100,000人のデータをコミュトレ独自に分析した結果、以下8つに集約されることが分かっています(2021年4月現在)。

 

※なお、ENDCOREモデルの「ソーシャル・スキル」と「ストラテジー」は、学術的にはまだ研究段階にあります。そのため、以下の能力はコミュトレが独自に提示したものです。

 【社会人に必要とされるビジネスコミュニケーション能力】1:上司の意図を正しく理解し、適切に報告・連絡・相談を行う能力2:同僚・他部署と信頼関係を構築する能力3:会議で自分の意見を論理的に伝える能力4:会議を円滑にファシリテートし、合意形成する能力5:人前で自信もって魅力的に伝えるプレゼンテーション能力6:顧客に対して魅力的に提案する能力7:相手とwin-win関係になるように交渉する能力8:部下を適切に育成し、成果を上げるチームを作るマネジメント能力

 

これらのビジネスコミュニケーション能力と「コミュニケーション・スキル」は階層関係にあります。

(以下の図で、関係性を表してみました)

なので、「コミュニケーション・スキル」を土台にしつつ、さらにその分野に即した専門的な知識・技能を習得することによって磨かれていきます。

 

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まとめ:コミュニケーション能力にはレベルがある

今回は、「そもそもコミュニケーション能力とは、どんな能力を指すのか?」について、心理学とコミュトレのデータをもとに整理してみました。

コミュニケーション能力は、よく考えてみると、一体何を指す言葉なのかとても曖昧ですよね。しかし、その構成要素を紐解いてみると、実は様々な細かい能力の集合体であることが分かります。

哲学者デカルトは「難問は分割せよ」という名言を残していますが、コミュニケーション能力も、まずは分割して考えてみましょう。そして、自分はどこを伸ばしていけばいいのかを考えると、コミュニケーション能力を向上させるヒントとなるでしょう。

 

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1967年 東京都出身。 東京工科大学機械制御工学科在学中に、輸入商社のスタートアップに参加。 1996年 株式会社コミュニティネット入社。営業所長として、PCソフト及びBTOパソコンの販売、ISP、IP電話代理店など、新規事業を立ち上げる。 1999年 「日本を元気にする会社を創りたい」と株式会社アイソルートを設立(eラーニング製品の開発)。専務取締役として営業、開発、財務の各責任者を歴任。 2004年 同社代表取締役に就任。以降19年間連続黒字と最高売上高更新中。 2007年 新宿区優良企業表彰「経営革新賞」受賞。 2012年 日経トップリーダー「本当に強い中小企業ランキング」全国総合14位、IT業界2位に選出。 2024年 ダイヤモンド社から書籍『話せる、伝わる、結果が出る!コミュトレ』を発売し、紀伊國屋書店ビジネス書第1位、Amazonセールス営業本第1位を獲得。

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