こんにちは!コミュトレの冬木です。
コミュトレ受講生から、
「人の心に響くような話ができる人は、何が違うのか」
と聞かれることがたまにあります。
同じ話を聞いても、「ふーん、そうなんだ」と心が動かないときと、「そうだったんだ!!!」と心が動かされるとき。
この違いは一体なんでしょうか。
その秘密は、「ストーリー(物語)」にあります。聞き手に影響を与える話は、みなストーリーとセットになっているのです。
今回は、人の心に響く話ができるようになりたい人に向けて、ストーリーの効果についてご紹介します。
※本記事は、コミュトレの「スピーチスキル(人前で自信をもって話す) Sコース」を参考にしています。
目次
1.「サンタクロースって、本当はママとパパなの?」ときかれた、あるお母さん
あるお母さんから聞いた話です。
彼女には、小3の息子がいました。
クリスマスを間近に控えたある日、息子からこう言われたそうです。
僕のお友達にね、「サンタクロースは親なんだよ」って言われたの。
「サンタクロースは親って。インターネットで調べたら、そう出てた」って。
あと1人も「サンタクロースは親だ」って言ってたの。
だから、サンタクロースって、本当はママとパパなんじゃないの?
小さなお子様をおもちの方であれば、同じような状況に遭遇することがあるかもしれません。
「実はそうだよ」と言うと、夢を壊しそうだし…
「え~そんなことないよ!だってサンタクロースってフィンランドに住んでるんだよ!」と理由を添えて論理的に答えても、どこか納得いかない表情だし…
難しい選択ですよね。
この切り返し方に、絶対的正解はもちろんありません。
このお母さんの場合は、論理的に答えるのではなく、あるストーリーを息子さんに語りました。
それを聴いた息子さんは、びっくりして「僕もサンタクロースを信じているよ!」とすぐに返したそうです。
いったい、お母さんは、なんと切り返したのでしょうか。
2.ストーリーは反論されにくい
話は少し変わりますが、世界一売れたロングセラーの本をご存知でしょうか。
それは、「聖書」です。2017年時点で3,200語にも翻訳され、累積発行部数は50億を超えるとも推定されています。
聖書は、さまざまな人物が登場するストーリーにあふれています。
聖書を読んだことがない方も、
- 人類で初めての罪を犯す「アダムとエバ」
- 人類史に残る大洪水を描いた「ノアの方舟」
- 預言者モーセが海を真っ二つに割る「出エジプト」
といった有名なストーリーは聞いたことがあるのではないでしょうか。
なぜ多くの人に読まれる本はストーリーを用いているのかというと、「心に届きやすい」からです。
ミシガン大学のメディア心理学者Sonya Dal Cin氏によれば、「ストーリーは説得的メッセージに比べて、反論しづらい」と指摘しています。(太字は筆者注)
説得メッセージの場合は主張内容が早い時点で明らかになるので,自分の意見にあわない内容には最初から注意をはらわずに済む。それに対し,物語の場合は読み進めていかないと主張内容がわからないので,それを無視することが難しい。更に,物語では特定の誰かに起きた出来事、つまり他者の経験が描かれるが,鮮明に描かれた他者の経験は,たとえそれがフィクションでも反論しづらい。
出典:小森めぐみ「物語はいかにして心を動かすのか:物語説得研究の現状と態度変化プロセス」2016年
そのため、ストーリーは、マーケティング用のCMや、スピーチにも活用されているほど。
以下、2つの事例をご紹介します。
1.CMで活用される「ストーリー」
たとえば、2016年に公開されたP&Gの洗剤Ariel(アリエール)のCM。
あるインドの家庭で、共働きの娘夫婦を見て「家事の負担を娘にかけてしまっている」と気づいた年配の男性がいました。
家に帰ったあと、服を洗濯しようとした奥さんを止めて、自ら洗濯するようになったのです。
「なぜ洗濯はお母さんだけの仕事なのだろうか?(Why is laundry only a mother’s job?)」で締めくくられた動画は、2016年にYoutubeで公開されて以降、335万回の再生数を記録しました(2022年12月現在)。
また、アリエールの売上を176%もアップさせたそうです。
2.名スピーチで活用される「ストーリー」
名スピーチと言われるスピーチも、必ずストーリーを入れています。
たとえば、世界屈指のスピーチ名人と謳われる故スティーブジョブス。彼が2005年に米スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチは大変有名です。
そんな彼のメッセージの一つが
今やっていることがいずれ人生のどこかでつながって役立つと信じて、一生懸命目の前のことを頑張ろう
です。これだけ聞くと、なんだかとても当たり前のことのように聞こえますよね。
しかし、こんなストーリーが添えられていたらどうでしょうか。
自分の興味の赴くままに潜り込んだ講義で得た知識は、のちにかけがえがないものになりました。
たとえば、リード大では当時、全米でおそらくもっとも優れたカリグラフの講義を受けることができました。キャンパス中に貼られているポスターや棚のラベルは手書きの美しいカリグラフで彩られていたのです。(略)
もちろん当時は、これがいずれ何かの役に立つとは考えもしなかった。ところが10年後、最初のマッキントッシュを設計していたとき、カリグラフの知識が急によみがえってきたのです。そして、その知識をすべて、マックに注ぎ込みました。美しいフォントを持つ最初のコンピューターの誕生です。
(略)
もちろん、当時は先々のために点と点をつなげる意識などありませんでした。しかし、いまふり返ると、将来役立つことを大学でしっかり学んでいたわけです。
繰り返しですが、将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。(略)だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。
(出典:日経新聞社 WEBサイト)
このような「ジョブズ氏にしか語れない自身のストーリー」が背後にあると、当たり前だと思っていた結論が、深みのあるメッセージに聞こえてきませんか。だからこそジョブズ氏は、聴き手の心をつかめたわけですよね。
このように、ストーリーは「相手の心に届かせたい文脈」で数多く活用されています。
3.息子の意見を一瞬で変えた「ストーリー」
話を戻しましょう。
冒頭で挙げた息子さんの質問「サンタクロースって、本当はママとパパなんじゃないの?」に対して、お母さんの返し方は以下のようなものでした。
「ママもね、小学3年生の時に、お母さんにきいたの。「サンタクロースはお母さんとお父さんじゃないの?」って。なんて言われたかは、わすれちゃったんだけどね、その次の年から、サンタクロースは来なくなったんだ。初めて、プレゼントのなかったクリスマスの朝はとても悲しかった。あのとき、信じてないことを言ったからかもしれないって、今も悲しい気持ちになるんだよ。だから、ママは、サンタクロースはいると信じているんだ。」
それを聴いた息子さんは、びっくりした顔になったそうです。
そしてあわてて「僕も、サンタクロースを信じているよ!」と反応したのだとか。
(もちろんそのお母さんは「だから、今の話は秘密にしておくね^^」としっかりフォローしたそうです)
もし、お母さんがこのように返したらどうでしょうか。
「ママはサンタクロースを信じているよ。だって、信じていないことを言って悲しい気持ちになったことがあったの」
おそらく、息子さんは「本当?」と思ったかもしれません。
しかし、「自分のところにサンタクロースが来なくなった経験」をストーリーとして語ることにより、息子さんの意見を一瞬で変えたのです。
もちろん、この返し方が正解ではありません。(小さい子供ほど威力が大きくなるため、相手を選んだほうがよいでしょう)
しかし、ストーリーを語ることによって、相手の意見が一瞬で変わるという効果を実感いただけたと思います。
4.ストーリーで、プレゼンを自在に操る人になろう
人の心に響く話ができるようになりたい人に向けて、ストーリーの効果についてご紹介しました。
ビジネスのプレゼンテーションでは「論理的に話すことが重要だ」と言われますよね。
しかし、いきなり論理的に「結論は…」「なぜならば‥‥」と伝えても、すんなり納得されないこともあるでしょう。
その場合は、是非ストーリーを使ってみましょう。
ストーリーをプレゼンテーションで使いこなす方法は、コミュトレ「スピーチスキル(人前で自信をもって話す) Sコース」で扱っています。
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