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ビジネススキル基礎

他人を理解できない人​が気づいていない​たった1つのこと​

コミュトレ編集部

今回は「他人を理解できない人が気づいていないたった1つのこと」というテーマでお話します。

 

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「他人を理解できない」の意味

他人を理解できない、とはどういうことでしょうか?

 

結論から言いましょう。ズバリ、話の観点を合わせていないことを指します。

 

先日実家にて、母と父がキッチンに立って、ランチを作っていたときのことです。父は大きな鍋でお湯を沸かしており、一方の母は包丁を握って小松菜を切っていました。その最中に、こんな会話をしていました。

父「うどんと小松菜は一緒の鍋でゆでたほうがいいだろう。その方が洗い物も減るし、しかも一度小松菜をゆで終わるのを待ってから麺をゆでるなんて時間がかかる」
母「何言ってるの。小松菜は別鍋でゆでるべきよ。一緒にゆでると小松菜の香りがなくなるじゃない」

こんな押し問答を繰り返した結果、結局父が根負けして小松菜を別鍋でゆでることになりました。

 

はたから見るとよくわかる通り、両者の会話は全くかみ合っておらず、最後まで平行線のままです。父は「効率性」の観点で話しているのに対し、母は「美味しさ」という別次元の観点で話しています。お互いにわかり合うどころか、対立していますね。

このような「平行線をたどっている会話」は、日常会話だけの話でしょうか。実は、ビジネス現場でも同じようなことが生じることがあります。

 

実際、私がインストラクターを務めるコミュトレのトレーニング最中も頻繁に起こっています。

 

 

たとえば「会議で論理的な発言をする」トレーニングは、4~6人でディスカッションを行うワークが行うのですが、その議題の1つとして以下のようなテーマを出すことがあります。(細かい部分は割愛します)

あなたの会社では、収入が少なく、このままでは生活が厳しい。副業を解禁して副収入を得られるような制度にしてほしいという不満の声が挙がっています。副業を認めるべきかどうかも含めて、社員の不満を解決するような施策を考えてください。

このように、問題に対するソリューション(対応策)を考える問題を全員で議論していただきます。その際、学習をはじめて間もないメンバーは、大体こんな会話をする傾向にあります。

「私は副業を認めるべきだと思います。もちろん本業とのバランスは考えるべきですが、その方が自分の知見も広くなるし、収入も上がるので、メリットが多いと思います。」
「いや、私は副業を認めるべきでないと思います。情報漏洩のリスクもあるし、休日も仕事しているわけですから、過重労働になって本人にとっても会社にとってもむしろマイナスになりかねないと思います」

 

お気づきの通り、両者の会話も全くかみあっていません。
副業容認派は「副業する社員自身のメリット」という観点から述べているのに対し、副業否定派は「会社に与えるリスク」の観点から話をしています。

このような観点のズレは、「理解し合えない会話の一例」といえます。

 

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理解し合うためには、コストを払う自覚をもつ

では、理解し合えない会話の原因に気づくことは難しいのかというと、意外とそうでもありません。むしろ、他人同士のやりとりを観察しているときは驚くほど客観的に状況を分析できることが多いです。

 

たとえば、冒頭でお話しした私の父と母のやり取りを思い出してみてください。「そんなむげに否定するんじゃなくて、まずお互いに共感したらいいのに…」と思った人もいるかもしれません。

 

案外私たちは、ただ傍で観察している第三者の立場なら、どうすれば会話のズレを修正できるのか、どうすればお互いに理解し合える会話ができるのか、すぐに気づけます。

 

しかし、いざ自分が「会話の当事者」になると、相手と理解し合えなくなってしまうんです。

 

だからといって、「理解し合えない会話を、頑張って理解し合えるようにしましょう」という主張をしたいのではありません。

 

むしろ、「そもそも人間は理解し合えないことが大前提。理解し合うためには『相手の立場を想像する』というコストがかかる。そして、コストを払う自覚をもつことが大事」というのが本記事の結論です。

 

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「人と人が理解し合える」は幻想

ちなみに、私の上司は、社内でも随一の説明上手で知られています。その人に以前「どうしてそんなに説明が上手いんですか」と聞いたら、「そもそも人は理解し合えないことが前提だから、自分の言っていることはそう簡単に伝わらないと思っている」と答えていました。

 

そもそも、「人と人は何もしなくても理解し合える」は幻想と言えます。なので、スムーズに進んでいる会話があるとしたら、お互いが無意識もしくは意識的に「相手の視点や主張の背景を想像しようとする」コストを払った結果、成り立っていると解釈できます。

 

これこそが、他人を理解できない人が気づいていないことでもあります。なぜ自分の話が理解されなかったのかを理解できないと、「なんで分かってくれないの!?」と憤ったり失望したりしてしまうのです。

 

しかし、少なくとも相手の立場を想像するというコストを払わない会話は、どこまでも平行線をたどります。強引に押し通しても、相手は表面的に理解したフリをしているだけで、心の底では納得できていません。そのような会話を続ければ、だんだん心が離れていくのは目に見えます。

 

このような事実を踏まえて、私たちはどうすればよいのでしょうか。

 

この記事で提案したいのは「相手を理解するためにはコストがかかることを自覚し、そのコストを払うかどうかを意思決定する」ことです。

 

コストという表現でもわかる通り、相手の立場を想像することは、時に大きな心理的負荷を伴います。自分ではなく相手になりきって想像するわけですから、全てを想像しつくそうとすればいつまで経っても発言ができない、ということになりかねません。

 

また、「自分の方がどう考えても正しいはず」と思うような主張を仮にもっていたとしたら、真逆の主張に対し、理解を示すのは並大抵のことではありません。私自身も難しいと思います。

 

つまり、相手の立場を想像することは、私たちが思う以上に脳のエネルギーを消費します。簡単にいうと、疲れるんです。なので、猫も杓子も「相手の立場を想像する」コストを払うべきかというと、それはあまり現実的ではありません。

 

小松菜を麺と一緒ににゆでるか別鍋を使うか、というレベルの日常会話であれば、そこまでのコストを払わなくてもいいのかもしれません。会話が平行線でもOK、というときもあるでしょう。

 

しかし、本当に理解し合いたい人や状況に直面した時には、私たちは「理解し合うためのコストを払おう」と意思決定する必要があります。

 

その主体的な意思決定こそが、「なんでわかってくれないの!?」というストレスを激減させる秘訣と言えます。

 

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1967年 東京都出身。 東京工科大学機械制御工学科在学中に、輸入商社のスタートアップに参加。 1996年 株式会社コミュニティネット入社。営業所長として、PCソフト及びBTOパソコンの販売、ISP、IP電話代理店など、新規事業を立ち上げる。 1999年 「日本を元気にする会社を創りたい」と株式会社アイソルートを設立(eラーニング製品の開発)。専務取締役として営業、開発、財務の各責任者を歴任。 2004年 同社代表取締役に就任。以降19年間連続黒字と最高売上高更新中。 2007年 新宿区優良企業表彰「経営革新賞」受賞。 2012年 日経トップリーダー「本当に強い中小企業ランキング」全国総合14位、IT業界2位に選出。 2024年 ダイヤモンド社から書籍『話せる、伝わる、結果が出る!コミュトレ』を発売し、紀伊國屋書店ビジネス書第1位、Amazonセールス営業本第1位を獲得。

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