「もっと能力を高めたい!このままじゃだめだ!だけど、何から手をつけていいのか分からない…」
こんなふうに、「もっと成長したい」と考えたことはないでしょうか。
一方で社会人になると、何をどう学べばいいのか、手取り足取り教わる機会がほとんどなくなっていくのも事実。
弊社もビジネスコミュニケーションのスクールを運営していますが、「コミュニケーション能力ってどうやって高めていけばいいか分からない」と多くのご相談をいただきます。
方法が思いつかない場合は、逆の立場で考えてみると、発想のヒントを得ることができます。
能力向上でいえば、「学び手」の反対である「教え手」の立場に立ってみましょう。
実は、効果的な「教え方」を追求する学問の観点で見ると、ひとくちに「能力」といっても、実は大きく3種類存在していることが分かっています。
そして、それぞれの種類ごとに特徴があるため、高め方も異なります。
せっかく能力を高めるのであれは、効率的・効果的に結果を出せる正しい努力をしたいもの。
そこで本記事では、効果的な教え方を追求する学問「インストラクショナル・デザイン」の観点から、能力の全体像を解説いたします。
是非、ご自身の学習目標を立てる参考にしてみてくださいね。
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目次
上手な教え方を追求する「インストラクショナル・デザイン」とは
インストラクショナル・デザインとは、何かをうまく教えるための方法・仕組みを追求する学問です。
私たち人間は、「他人に教わって学ぶ」という長い学生時代を経て社会人となりました。その中で特に印象に残った先生や授業もあれば、そうでもない授業もあるでしょう。
良い先生との出会いが、その教科に関心をもったり進路を考えたりするきっかけになった方も多いはずです。
一方で、教え方がまずいがゆえに、その教科が嫌いになってしまったという方もいます。
このように考えると、「良い先生との出会い」が私たちの人生を決定づけているといっても過言ではありません。
だからこそ、インストラクショナル・デザインは「上手に教えるためにはどうすればいいのか?」を追求しているのです。
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学び手主体である「インストラクショナル・デザイン」の考え方
インストラクショナル・デザインは「学び手が主役」という考え方に立っています。
従来の教育は「学び手の能力が高まっているかどうかに関係なく、教え手が教える意識をもっていれば教育とみなす」という考え方が主流でした。
※これを「意図的教育観」と呼びます。
しかし、この考え方だと、能力向上がその学び手に依存してしまいます。その結果、能力向上に結び付かず、離脱してしまう方も少なくありません。
この考え方への批判として、アメリカの教育学で生まれたのがインストラクショナル・デザインです。教え手ありきではなく、まずは学び手のニーズを特定し、そのニーズを満たすための学習結果をゴールとして設定するものなんですね。そして、そのゴールから逆算して、「何を」「どの順番で」「どのように学び」「どう評価する」と最も効率的・効果的なのか?を考えるのです。
※これを「成功的教育観」と呼びます。
だからこそ、学び手視点でインストラクショナル・デザインをとらえると、能力向上のヒントが満載なのです。
そこで、本記事では、インストラクショナル・デザインに基づいて、「能力」の種類を挙げていきます。
能力の全体像
能力の分類の全体像については、教育心理学者ブルーム(Benjamin Bloom)が中心となってまとめた「ブルームの教育目標の分類法」が礎となっています。
ブルームによれば、能力は以下3種類の領域に分類されるといいます。
1. 認知的領域:知識を覚えたり、知っていることを応用する思考作業2. 精神運動的領域:
体をスムーズに動かす3. 情意的領域:行動を選び取とろうとする姿勢
それぞれ、以下のように言い換えられることもあります。
1.認知的領域→知識2.精神運動的領域→運動技能3.情意的領域→態度
本記事では、上記の表現を踏襲していきます。
仕事で求められる能力は、基本的にこの3つの組み合わせで成り立っています。
例えば、「エクセルソフトで表計算をする」という仕事を分解してみましょう。
すると、
・表計算するための関数を知っている(知識)・行いたい表計算に合わせた関数の知識を思い出せる(知識)・キーボードのタイピングが出来る(運動技能)・表計算を使ってどんなことを知りたいのかを正しくくみ取ろうとする(態度)
といったように、知識・態度・運動技能がすべて組み合わさっていることがわかります。
逆を言えば、この3種類のうちどれかが欠けても、能力として発揮できません。キーボードのタイピングはできたとしても、関数を知らなければその計算はできませんよね。
ですから、能力を向上させるには「知識・技能・態度」の3種類をバランス良く高めることが重要となります。
それでは、それぞれの特徴を次に見ていきましょう。
能力①:思考作業のほぼ全てを占める「知識」
先ほど、認知的領域をざっくばらんに「知識」と呼びました。
ここでいう「知識」の意味は、非常に広範囲にわたります。例えば、
・資料を読む・文書を書く・数字を計算する・事実と推測を区別しながら話を聞く・情報を比較する・優先順位を判断する
といったように、私たちが日常的に行う頭脳活動はほとんど「知識」に相当します。
そのため、「知識」は厳密にいえば、さらに2種類に分けられます。それが「言語情報」と「知的技能」です。
能力①-1:言葉で記憶された情報である「言語情報」
言語情報は、言葉で記憶された情報を指します。思考するためには、そもそも情報として頭に入っている必要がありますよね。
いわゆる「知っている」というのは、この「言語情報が頭に記憶されている」という状態を指します。そして「知っている」ことは、あらゆる能力向上の基本となります。
たとえば、
・英語のテスト問題を解くときに、英単語や文法を記憶していなければ回答は難しいでしょう。・スポーツでも、試合ルールを記憶していなければ、試合で適切に動くことはできません。・「人種差別は良くないことである」というモラルが記憶になければ、人種差別をしないようにしよう、という態度をとることもできませんよね。
このように、言語情報はあらゆる能力の根底に位置しています。
言語情報だけを見ると「能力」といえないのでは?と違和感が生じるかもしれませんが、思考作業と非常に密接に関連しているといえます。
とはいえ、言語情報をもつだけだと、まだ単に「思い出せるだけ」にすぎません。
つまり、その情報を自分の課題にあてはめて問題解決したり、行動を変えたりするといったような「できる」段階にまで至ってはいないのです。
そこで出てくるのが、次の「知的技能」です。
能力①-2:情報を応用する能力である「知的技能」
知的技能は、情報を区別したり、例を挙げたり、整理したりする能力です。一般的にいう「考える」という行為は、ほぼこの知的技能を指すといっても過言ではありません。
本質を一言で伝えると「覚えた言語情報を、新しい事例に応用させる」ことにあります。
たとえば、
・営業職の方が、お客様のニーズに合わせて営業トークを使い分ける・技術職の方が、エラー発生した機器をトラブルシューティングする・プレゼンターが、聞き手の知識レベルに合わせて例え話を使い分ける
といったような例が考えられます。
このように知的技能が高い人は、「情報処理能力・問題解決力に優れている」と高く評価される傾向にあります。
ところが知的技能は、実のところ、よりシンプルな知的技能の組み合わせにすぎません。
例えば、
A.プレゼンターが、聞き手の知識レベルに合わせて例え話を使い分ける
という複雑な知的技能は、
A-1. 聞き手の知識レベルを推し量るA-2. 言いたいことを表現するたとえ話のネタを挙げるA-3. ネタの中から、相手に適したものを選択する
という、よりシンプルな3つの知的技能に因数分解できます。(もちろん、これらもさらに細かい知的技能に分解されます)
逆を言えば、1つ1つはシンプルな知的技能であっても、それらを数多く組み合わせれば、いくらでも高度な知的技能に発達させることができます。1つの石を組み合わせて巨大なピラミッドを作るようなイメージですね。
「考える」というと、「ロジカルシンキングは苦手なんです…」「発想力に乏しくて…」とたまに聞きますよね。しかし、実はシンプルな能力の組み合わせだと分かれば、少し簡単に見えてこないでしょうか。
能力②:身体を自在に動かすための「運動技能」
運動技能は、筋肉を使って、自分が思った通りに身体(口、顔、声、手、足など)を動かす能力を指します。おそらく、「能力」と聞くと一番想像しやすいのではないでしょうか。
例えば、身近なものでいえば、ざっと以下のように挙げられるでしょう。
・笑顔を意識しながら話を聴く・声に抑揚をつけながら話す・ブラインドタッチをする・サッカーのシュートができるようになる・野菜のみじん切りを速く正確に行う
運動技能も、先に出た知的技能と同様に、よりシンプルな運動技能(動作)の集合体で成り立っています。組み合わさった結果として、1つの複雑な運動技能に発達しているのです。
例えば、
B.自転車に乗る運動技能
は、以下のように分解できます。
B-1. ペダルをこぐ B‐2.サドルの上でバランスをとるB‐3.ハンドルを切るB‐4.ブレーキをかける
これらのどれか1つでも欠けていれば、「自転車に乗る」という行為はとれませんよね。
しかし、1つ1つが出来るようになれば、最初は難しく思えてもいつの間にか習得しています。
このように、運動技能も知的技能と同様、よりシンプルな技能の組み合わせになっているところが特徴です。
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能力③:物事や状況を選択する「態度」
態度は、「何らかの状況・物事を選ぼう/避けようとする気持ち」を指します。気持ち自体は直接目に見えませんが、選んでいる行動に間接的に現れます。
たとえば、「オフィス内をきれいにしたい」という態度をもっている人は、ゴミが落ちているのをみれば、拾ってゴミ箱に捨てるという行動をとるでしょう。
もちろん、毎回そうとは限りませんよね。
しかし、何度かに一度、ゴミを捨てるという行動をとるなら、その人は「オフィス内をきれいにしたい」という態度をもつと判断されます。そして、この行動を選択する頻度が高ければ高いほど、態度を強くもっているとみなせます。
本記事でご紹介する能力の3種類のうち、もっとも影響力が大きいのが態度です。なぜなら、知識(言語情報・知的技能)も運動技能も、どんな態度をもっているかによって発揮の仕方が変わるからです。
例えば、感謝表現である「ありがとうございます」という情報を知っており、実際に言葉として発することができたとします。しかし「積極的に感謝しよう」という態度が弱い人は、ほとんど感謝の言葉を出しません。一方で感謝の態度が強い人であれば、折に触れて感謝の言葉を述べるでしょう。
どちらの行動をとるかによって、周囲との人間関係に大きな差が生まれるのは、言うまでもありませんね。
そのため、態度はその人の生き方や立ち居振る舞いを大きく形成するといえます。まさに、人生を左右するといっても過言ではありません。
とはいえ、態度は知識(言語情報・知的技能)と運動技能の集合体です。つまり、ある行動をとろうと思ったら、まずはその行動の重要性を知識として知っていること、およびその行動に移す運動技能を保有していることが大前提です。
ですから、知識・運動技能と比べて最も複雑といえます。
逆を言えば、一度身につけると他人には簡単に真似できない大きな競争力にもなります。
是非、この態度を意識的に身につけていけるといいですね。
まとめ:能力は「知識・運動技能・態度」の3種類に分かれる
今回は、能力を高めていきたい方に向けて、インストラクショナル・デザインという学問の観点から、能力の全体像をお伝えしました。
以下、簡単にその特徴を復習しましょう。
1.知識1-1.言語情報言語情報は、言葉で記憶された情報です。「知っている」ことは、この「言語情報が頭に記憶されている」という状態を指し、あらゆる能力向上の基本となります。1-2.知的技能知的技能は「覚えた言語情報を、新しい事例に応用させる」能力のこと。知的技能が高い人は、「情報処理能力・問題解決力に優れている」と高く評価される傾向にあります。しかし、どれほど高度な知的技能であっても、よりシンプルな知的技能の組み合わせにすぎません。2.運動技能運動技能は、筋肉を使って、自分が思った通りに身体を動かす能力です。知的技能と同様に、よりシンプルな運動技能(動作)の集合体で成り立っています。3.態度態度は、「何らかの状況・物事を選ぼう/避けようとする気持ち」を指します。そして、その人がとる行動に現れます。態度は、知識(言語情報・知的技能)と運動技能の集合体であり、その人の人生にとって最も影響が大きい能力です。
それぞれの向上方法は、別の記事でどんどんご紹介していきます。
ぜひ、あなたの能力向上にお役立てくださいね。
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