職場で上司や先輩後輩、仕事相手と話している際、「伝えたいことがうまく話せない」と感じる方は多いでしょう。
自己表現が苦手な方は人間関係を壊したくないとの思いから、上司に遠慮して主張できなかったり、後輩を叱れなかったりします。
こうした悩みを持つ人が増えてきたことにより注目されているのが「アサーショントレーニング」です。この記事では、アサーションとは何か、またアサーショントレーニングの方法や具体例を解説します。
最後まで読み進めることで、職場でのストレスを軽減する方法や、ハラスメント防止の方法がわかります。
また、アサーショントレーニングには、自己分析も欠かせません。「コミュトレ」の無料診断も、ぜひ活用してみてください。
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目次
アサーショントレーニングとは?
アサーション(assertion)とは、「自分の気持ちと相手の気持ち両方を大切にするコミュニケーション」のことです。アサーショントレーニングはこのコミュニケーションを用いたトレーニング方法で、1950年代のアメリカの心理療法が考え方の起源となっています。「アサーション」と「アサーティブ」は同じ意味で、日本語に訳すると「自己表現」と言い換えられます。
歴史
アサーショントレーニングの歴史は、アンドリュー・ソルター氏の著書「条件反射療法(Conditioned Reflex Therapy)」から始まりました。
本書では、人間の行動を理解するための、基礎的な考え方・テクニックが紹介されています。
そして10年の時が経ち、不安の抑制にアサーションが有効と判明し、自己主張を行うアサーショントレーニングが開発されました。
アサーションは1970年代にさまざまな研究者の手で効果研究が行われ、日本でも1980年代頃から職場に取り入れられています。
アサーショントレーニングが広まった背景
アサーショントレーニングが日本に広まったのは1980年代で、特にビジネスシーンで考え方が注目されていました。背景には、ハラスメントの増加や、職場の人間関係が複雑になったことが挙げられます。
加えて、リモートワークなどのコミュニケーション方法の変化により、ストレスを抱える社員やパートナーが増えたことも背景の1つです。
こうした企業の抱える環境問題の改善・コミュニケーション円滑化の施策としてアサーショントレーニングが注目されています。
仕事で注目されている理由
アサーショントレーニングが仕事で注目されている理由は、企業にダイバーシティ&インクルージョンが求められているためです。
ダイバーシティ&インクルージョンとは、それぞれ以下の意味があります。
- ダイバーシティ:企業が多様な個性や背景を持った人材を積極的に雇用する
- インクルージョン:多様性を持った従業員が互いの個性を認め合って働く
実現には、感情的なぶつかり合いは避けながらも、自分の意見を主張できる関係性が大切です。
そのため、自分と相手の気持ちを大切にするアサーショントレーニングが、仕事で注目されています。
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アサーショントレーニングにおける自己表現の つのタイプ
アサーションの考え方は、それぞれの自己表現のタイプを4つに分類しています。各タイプは以下の通りです。
- 攻撃タイプ(アグレッシブ)
- 間接的攻撃タイプ(パッシブアグレッシブ)
- 非主張タイプ(ノン・アサーティブ)
- バランスタイプ(アサーティブ)
それぞれの詳細を以下にまとめました。
攻撃タイプ(アグレッシブ)
相手より自分を優先して考えるタイプです。相手の意見に関わらず、自分の意見を一方的に伝えるようなコミュニケーションで、大きな声や威圧的な態度で強引に意見を押し通すこともあります。
間接的攻撃タイプ(パッシブアグレッシブ)
パッシブアグレッシブは、悪口を言いやすいタイプです。アグレッシブタイプとは異なり、怒鳴るような直接的な表現はしません。
しかし、消極的かつ否定的な態度・行動を見せて、周囲を思い通りにコントロールしようとします。たとえば、明確な意思表示をしないにも関わらず、他者が決めたことにため息をつくなどです。
他にも、ビジネスでありがちな行為として、「上司を無視する」「仕事をわざと遅らせる」が挙げられます。
パッシブアグレッシブの人は、いい人でいようと感情を押し殺すため、ストレスを抱えてしまいます。不平不満や怒りを表現できると、ストレスも解消されるでしょう。
非主張タイプ(ノン・アサーティブ)
自分よりも相手を優先して伝えるタイプです。はっきりとした自己主張が苦手で、相手の意見や態度に合わせてしまうためストレスを溜めやすく、組織からも「意見のない人」と見られる可能性があります。
バランスタイプ(アサーティブ)
自分のことや気持ちを素直に伝えますが、相手の気持ちも考えてコミュニケーションできるタイプです。アグレッシブとノン・アサーティブのよいところを取ったバランス型と言えます。アサーショントレーニングでは、バランス型(アサーティブ)を目指します。
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アサーショントレーニングが広まった背景
アサーショントレーニングが日本に広まったのは1980年代と言われていますが、近年、特にビジネスシーンでこの考え方が注目されています。背景には、ハラスメントの増加や、職場の人間関係が複雑になったことが挙げられるでしょう。加えて、リモートワーク等のコミュニケーション方法の変化により、ストレスを抱える社員やパートナーは少なくありません。
こうした背景から、企業における環境改善・コミュニケーション改善の施策の一つとしてアサーショントレーニングが注目されているのです。
アサーショントレーニングを実践する5つのメリット
アサーショントレーニングを実践すると、その人や企業にとって以下の5つのメリットがあります。
- 自分の意見や要望を表現できる
- コミュニケーションが円滑になる
- ストレスが軽減する
- 生産性が向上しやすい環境になる
- ハラスメント防止につながる
5つのメリットが得られていないと感じる方は、ぜひアサーショントレーニングを行ってみてください。
自分の意見や要望を表現できる
アサーショントレーニングを実施するメリットとして、自分の意見や要望を表現できる点が挙げられます。
他者を傷つけない感情の表現方法や、なぜ自分が感情表現できないのかが、トレーニングによって理解できるためです。
社内外問わず、相手に配慮した態度で接せられると、信頼関係が結べます。商談や普段の業務が効率的に進められるでしょう。
また、ビジネスでは、意見や要望を伝えなければならない場面が多くあります。自分の意見や要望の表現が、周囲からの評価を高める第一歩と考えるとよいでしょう。
コミュニケーションが円滑になる
アサーティブにものごとを伝えられるようになると、「顔色を伺って伝えるのを我慢する」ことが減り、結果的にコミュニケーションをスムーズに進めやすくなります。職場全体の「報連相」スキルの向上にもつながるでしょう。
ストレスが軽減する
「言いたいことが言えない」状況は、その気持ちを抱えている人にとって心理的に負担がある状態です。アサーションを身に付けることで必要なことを適切に伝えられるようになり、ストレスがたまりにくい職場環境になります。
生産性が向上しやすい環境になる
年次やキャリアに遠慮をせず対等な関係で意見を伝え合えると、会議の質や参加者のモチベーションも上がります。アサーティブなコミュニケーションを続けていくことで、結果的に生産性が上がりやすい環境に変わっていきます。
ハラスメント防止につながる
ハラスメント防止につながることも、アサーショントレーニングを実施するメリットです。トレーニングによって、感情のままに話すことがなくなり、他者に配慮した対話ができるでしょう。
反対に、感情的に話すとその気がなくとも、指導の際に攻撃的な発言をしてしまいます。ハラスメントだと受け取られてしまうため、気をつけてください。
攻撃的な言葉も信頼関係が築かれていれば、愛の鞭と受け取る部下もいます。しかし、感情のままに話す上司を、心から信頼する部下はいません。
怒りの感情は表に出さずに、建設的な会話を心がけましょう。ハラスメントにならないように気を配っていれば、部下に伝わり、信頼関係も構築できます。
無料でできるアサーショントレーニングの実践法
次に、アサーショントレーニングを行う際の4つの実践法をまとめました。それが以下の方法です。
- 「Iメッセージ」を使う
- 「DESC法」を使う
- 感謝とセットで伝える
- 限界を設定して伝える
1.「Iメッセージ」を使う
「Iメッセージ」とは、主語を「You(あなた)」ではなく「I(私)」に変えて伝える方法です。主語が相手だと否定的に聞こえてしまうことも、「私」に変えることで相手を尊重しながら自分の気持ちを伝えられます。
2.「DESC法」を使う
「DESC(デスク)法」は、以下の順番で話すことで相手にわかりやすく伝える方法です。自己主張を4つの段階に分けることで、柔らかく主張できます。
DESCの詳細は以下の通りです。
Describe[描写する] | 今の状況を客観的に表現する |
Explain[説明する] | 描写に対する自分の状況をIメッセージで主張する |
Specify[提案する] | さらに、相手にしてほしいことや解決策を伝える |
Choose[応答する] | 提案で伝えた選択肢を相手にも選んでもらう |
3.感謝とセットで伝える
感謝とセットで主張する方法もアサーションでは有効です。特に何かを断るなどのマイナスな表現をする場合に使ってみてください。
直接的には言いにくいことも、感謝やポジティブな言葉とともに伝えると、相手も嫌な気持ちはしません。
4.限定を設定して伝える
仕事の依頼や誘いを受けた際、「できること」と「限界」をセットで伝える方法です。できないことは素直に伝えつつ、「できる範囲」を伝えることによってお互い歩みよれるでしょう。
アサーショントレーニングの実践法を用いた例
組織内で起こる事象に対して、アサーショントレーニングの方法を活用した場合(OK例)と、NG例をまとめてみました。
- 「Iメッセージ」を使う例
- 「DESC法」を使う例
- 感謝とセットで伝える例
- 限定を設定して伝える例
ぜひ、実際に使用してみてください。
1.「Iメッセージ」を使う例
Iメッセージを使った例文を2つ、紹介します。
例1)自分が後輩に対して資料の作成を依頼したが、設定していた締切直前の時間に提出された。
・NG例:締切には間に合っているけれど、(あなたは)いつも締切の時間に対してギリギリすぎる。余裕を持って提出できない?
・OK例:締切を守って提出してくれてありがとう!さらに1日くらい余裕を持ってくれたら(私は)助かるな。
例2)先輩に打合せの主旨を確認する場合
・NG例:本日のお打ち合わせの主旨ってなんですか?
・OK例:本日のお打ち合わせの主旨を教えていただけると(私は)うれしいです。
上記のように、同じ内容を伝える場合でもIメッセージに変えることで表現が柔らかくなります。
2.「DESC法」を使う例
DESC法を用いて、以下の場面に対する具体例を紹介していきます。
例)「疲れがたまっているので今日は定時で帰ろう」と思っていたところ、帰り際に先輩複数名から食事に誘われた。
Describe[描写する] | 今日はみなさんで集まって飲みに行かれるんですね。 |
Explain[説明する] | (私も)非常に行きたいところなんですが、疲れがたまっていまして…。 |
Specify[提案する] | 来月は私が企画するので、今回はパスしてもよろしいでしょうか。 |
Choose[応答する] | ・相手が「OK」の場合:
ありがとうございます。また来月お声がけしますね! ・相手が「NG」の場合: 申し訳ありませんが、体調を優先させていただけると(私は)嬉しいです。ぜひまたの機会にお願いします。 |
「提案する」際に相手に選択肢を与えているので、「応答する」はOK・NGの場合それぞれに合わせて返答をします。NGの場合にも、相手の気持ちを汲みながら自分の気持ちを伝えるIメッセージを意識してみましょう。
3.感謝とセットで伝える例
感謝とセットで伝える方法の例を紹介します。
例)後輩がミーティング用の資料を作成してくれたが、要点がまとまっていない部分があった。
・NG例:ここの詳細がまとまっていないから、16:00までに修正してくれる?
・OK例:資料作成ありがとう!いい感じ! ここの詳細だけまとまっていないから、16:00までに修正してくれる?
NGの文章の前に感謝の気持ちを足すだけでも、伝わり方も優しくなります。
4.限定を設定して伝える例
限定を設定して伝える例を紹介します。
例)上司に新たな案件の仕事を頼まれたが、タスクが重なっており、自分には新たに受けられる余裕がない。
・NG例:申し訳ありません。現状のタスクで手一杯で、受けられる余裕がありません。
・OK例:ご依頼ありがとうございます。現状のタスクが詰まっている状態のため、案件全部を1人では受けられないのですが、Aさんのサポートという形で入らせていただくのはいかがでしょうか。
仕事でアサーショントレーニングを実施する目的とは?
仕事でアサーショントレーニングを実施する目的は、組織の心理的安全性を高めることです。心理的安全性とは、安心してチーム内で発言できる状態を指します。
職場に他人の意見に不満をもらす方やイライラを募らせる方がいると、安心して発言できず、心理的安全性は保てません。
チームのコミュニケーションを活発化し、生産性を高めるためには、アサーショントレーニングの実施が必要です。
アサーショントレーニングを効果的に進めるポイント
アサーショントレーニングをより効果的に行うためには、方法の取得だけでは足りません。以下のポイントもあわせて押さえておきましょう。
- 自分の感情や思考を言語化する
- 事実・思考・提案を分けて考える
- ロールプレイングを行う
トレーニングの際には、ぜひ参考にしてください。
自分の感情や思考を言語化する
思いついたことや感情をそのまま伝えてしまい、相手を困らせてしまった方は多いでしょう。アサーショントレーニングを習慣化するためにも、日常的に自身の考えを整理し、言語化する習慣を身に付けておくことが大切です。
事実・思考・提案を分けて考える
起きている事象を細分化して思考する習慣も、効果的に進める重要なポイントです。アサーショントレーニングにはポジティブな提案をセットにして伝える方法があります。
しかし、適切に事実を把握して思考しなければ、よい提案も生まれません。
日常的に「事実」「思考」「提案」を、分けて考える習慣を身に付けましょう。
ロールプレイングを行う
上記のような言語化・思考の細分化は見ただけでは習得できません。上司や先輩役・後輩役などを設定し、社内でロールプレイングを実施しましょう。繰り返し行うことで習得のスピードも速まります。
アサーショントレーニングを効果的に進めるポイント
アサーショントレーニングをより効果的に行うためには、方法の取得だけでは足りません。以下のポイントも併せて押さえておきましょう。
自分の感情や思考を言語化する
思いついたことや感情をそのまま伝えてしまい、相手を困らせてしまったことはないでしょうか。アサーショントレーニングを習慣化するためにも、日常的に自身の考えを整理し、言語化しておく習慣を身に付けておくことが大切です。
事実・思考・提案を分けて考える
起きている事象に対して細分化して思考する習慣が大切です。アサーショントレーニングにおいてポジティブな提案をセットにして伝える方法がありますが、適切に事実を把握し、適切に思考しなければ良い提案も生まれにくいでしょう。
そのためにも、日常的に「事実」「思考」「提案」を分けて考える習慣を身に付ける必要があります。
ロールプレイングを行う
上記のような言語化・思考の細分化は見ただけでは習得できません。上司や先輩役・後輩役などを設定し、社内でロールプレイングを実施しましょう。繰り返し行うことで習得のスピードも速まります。
アサーショントレーニングでビジネスを円滑に
「うまく伝えられなかった」経験はどのような立場の人にも起こりうることです。さらに、今後は働き方や働く仲間が多様化していきます。コミュニケーションの壁にぶつかる機会も増えるでしょう。
その際に、アサーションのスキルは会話や仕事を円滑に進める一助となります。
コミュニケーション力はセンスではなく、学びと実践を繰り返すことで身に付けられるスキルです。
アサーションスキルも同様に、トレーニングによって身につけられます。効率的に習得するために、自分がどのタイプにあてはまるのかや、コミュニケーションの長所短所を知っておきましょう。
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