コミュトレの冬木です。
以前、コミュトレ受講生からこんなご相談をいただきました。
「説明力を高めたい。でもどこまで頑張れば、”高まった”と実感できるのか」
説明力に関心がある方なら、誰もが⼀度は悩むでしょう。
今回は、過去10年間受講生をサポートした経験をもとに、私なりの回答をお伝えします。
目次
1.プロとは「違いが分かる人」のこと
以前、あるTV番組でサッカー日本代表(当時)・三苫薫選手による実演解説が特集されていた時のことです。
三苫選手といえば、「日本最強ドリブル」とも称される俊足が持ち味。2022年カタールW杯スペイン戦にてラインの僅か1.88ミリを粘って折り返し、ゴールをアシストした「三苫の1ミリ」は、国内外ともに大きな反響を呼びました。
三苫選手は、習得したきっかけとして「ネイマール選手がその動き方をしているのを見て、真似して身につけようと思った」と振り返っていました。
対して、内田キャスターは「俺もネイマールを見てたけど(でも気づかなかった)」と苦笑していたのです。
このストーリーは、「トップ1%のプロとはどんな人なのか」を如実に表していると思いませんか。
私のようにサッカーをあまり知らない人がネイマールの試合を見たら、「すごいことはわかるけど、何がどうすごいのか具体的には説明できない」ケースが大半ではないでしょうか。
逆に日本代表であっても、さらに抜きん出る人は、他の選手が見落とすほどの「微妙な動作」までしっかり認識しているのです。
つまり、プロたる特徴の1つは「気づきが増える」、言い換えれば「ふつうは見落とすような違いまで分かる」ことにあります。
2.上達の法則に見る「説明力が高まったと感じる瞬間」
心理学者である岡本浩一氏が指摘するように、上達とは「他者を見る眼が変わる」実感をもつことです。
上級者になればなるほど、わずかな特徴から多くのことを読み取り、それによって技量の評価を形成することはできる。中級者では細かな技能についてコードが十分形成されていないので、細かな機能が認知の網にかかりにくいのである。
出典:上達の法則 効率のよい努力を科学する (岡本浩一/PHP新書)
説明力を鍛える場合も同様です。自分の説明力の高まりは、実は「他人の話を見る眼(聞く耳)が変わった」ときに実感することが多いのです。
というのも、説明力が真に高まると、三苫選手がネイマールを観察するかのように、他人の話を聞いて「なぜ分かりやすかったのか」「なぜ分かりにくいと感じたのか」を細かく分析できるようになるためです。
【実例】説明力の高い人が、報告を聞いて考えていること
他人の話を聞いたとき、説明力が高い人の頭の中では、実際に何が起こっているのでしょうか。
例えば、部下から上司への報告シーンを考えてみましょう。
部下「課長、A社のインタビュー記事の入稿作業についての進捗報告とご相談なのですが、今お時間少し大丈夫ですかね?」課長「あ、いいよ」部下「ありがとうございます。まず、記事の完成度はざっと6割ほどです。文字起こしデータをもとに構成を作り、書き進めています」課長「なるほど、了解」部下「ただ、この後どう進めればいいか悩んでいて、ご相談したいなと。レイアウトとか細かい言い回しが気になってしまい、このままでいいのか不安になってきてですね…もう少し修正した方が分かりやすいかなと思うんですが」課長「えーと‥‥」
もし説明力の高い人がこの会話を聞いたら、以下の点に着目するでしょう。
【説明力の高い人が得ている気づき】「この部下は、結論を述べる前に、これから話すテーマを上司と共有して、聞く体制を作っているな」「自分のペースで話を進めるのではなく、今話しかけてOKかを上司に確認しているな。ちゃんと聞き手の都合に配慮しているぞ」「進捗報告なので、『ざっと6割ほどです』と最初に結論を述べているから分かりやすい」「でも、事実と感情を区別できていないな。だから課長は、最後に困ったようなリアクションをとったんだろうな」「本来だったら『レイアウトや言い回しなどの細かいところで修正が必要そうな箇所が目立っていますが、記事もあと4割残っています。提出期限まであと2日ありますが、一度戻って綺麗に整えてから進むか、最後までいってから修正するのか、どちらが良いですか?』など、事実を示したうえで質問した方が上司は答えやすいのでは」
参考:上司から感心される部下vsウンザリさせる部下|報連相にみる5つの違い
このように、説明力が高い人は、「説明のどこがどう素晴らしいのか」「説明のどこをどう変えたらよいのか」細かい部分まで気づくことができます。
(もちろん、実際に口に出すとカドが立つので、自分の心の中に留めることがほとんどですが…)
一度言葉で分析をすれば、あとは応用して真似るだけです。だからこそ、三苫選手がネイマールの動きを習得するかのように、説明力がさらに向上していくのです。
一方で、「なぜ分かりやすいと感じたのか」「なぜ分かりにくいと感じたのか」が分析できなければ、真似るどころか記憶にすら残らないことも多いでしょう。
そのため、説明力が高い人と低い人とでは、成長スピードに雲泥の差が生じるのです。
3.説明力の理論を知るからこそ、他人と差がつく
説明力が高い人は、そうでない人に比べてなぜ、話の細かいところまで意識を向けることができるのでしょうか。
その理由の一つは「もともとの分析力の差では?」と思いがちですが、実際は「説明力に対する知識量の差」にあります。
先述の岡本氏もいうように、知識(理論)を知るからこそ、その重要性に気づくことができるのです。
よく、理論はプロのため、達人のためのものだと考えている人がいる。その考えはむしろ逆であることを指摘しておきたい。(略)贅沢な練習ができない私たちこそ、理論をきちんと学ぶことによって、技能に関する思考能力をあげ、経験不足を補うべきなのである。
理論を学ぶことによって、細かい差の重要性や意味を理解できるようになる。理論書にはしばしば、微細な違いが、理論的に評価して記載されている。理論の記載をきちんと理解することによって、正確な認識方法、思考方法を身につけることができる。そうすると、中級者のときには大した違いだと考えていなかったことが、じつはとても大切なことがらだったというようなことがわかるようになる。
(原文より抜粋。一部、言い回しを筆者にて変えています)
あなたの場合を振り返ってみてください。
仕事の熟練度が上がるごとに、新人のころは気にも留めなかった細かい動作が「なぜ重要なのか」、説明できることが増えているのではないでしょうか。
実際、コミュトレ受講生の成長記録をみると、コースの学習が進むごとに気づきの量が増えています。
お客様と話すときも「あ、コミュトレのあそこのところだ」と頭の中で本を開いているような感じになってきました。
このように、理論を学んでその重要性を知るからこそ、同じ話を聞いても他人より多くの気づきを得ることができるのです。
4.説明力を高めるなら「人の話を分析できる」レベルを目指そう
冒頭の質問に戻りましょう。
「説明力を高めたい。でもどこまで頑張れば、”高まった”と実感できるのか」
この質問に対する私なりの答えは、こうです。
「人の話を細かく分析できるレベルになったら、説明力が高まった証拠」
言葉で細かく分析できれば、それを応用したり真似ることで、より一層成長を加速させることができます。
そのためにぜひ、説明力の理論を学んで、スキルアップのギアを上げてみてください。
※ちなみに、コミュトレでも説明力の理論を体系的に学びつつ、実践練習することができます。コースは数十万円しますので安い金額ではありません。が、お値段以上の価値はあると自信もっていえます。
気になる方のみ、よろしければ個別相談会にお越しください。ご関心がない方であっても、書籍やyoutubeでも良いので、説明力の理論を体系的に学ぶことをお勧めします。