社会人向けのコンサルティングを長年担当しているが、
「これから先、ちゃんと稼いでいけるのか」
という問いは、誰もが一度は遭遇する大きな悩みだと感じる。
そこで今回はITエンジニア向けに、稼げるエンジニアを決定付けるビジネススキルについて紹介しようと思う。
ぜひ、これからの生き方、働き方を考えるうえでの参考にしてほしい。
※注意本記事では、ITエンジニアを「下流工程(詳細設計・開発構築・テスト・保守運用・監視)に携わる開発メンバー」と指している。
目次
所得を決める、「出来ること」と「求められること」のバランス
30代以降は、結婚や子育てなどが身近となるため、20代のころ以上に「所得をあげたい」と強く感じるようになるだろう。
しかし、本質的に考えれば、所得は「自分ができること」と「社会から求められていること」のバランスで決まる。
いくら能力が高くても、社会から求められていなければ所得には繋がらない。また、社会的ニーズがあっても、応えるだけの能力をもつ人が多ければ、高い所得には繋がらない。
たとえば、スマートフォン全盛期にガラパゴスケータイの開発を一生懸命行っても成果にはつながりにくいだろう。
弁護士の例でみても、司法試験に合格する能力は同じでも、弁護士資格保有者が年々増えたことによって、平均所得は徐々に下がっている。
そのため、社会から求められているにもかかわらず、応えられる人がまだ少ない領域こそ、所得を高めるねらい目となる。
「技術力×ビジネススキル」1億円の所得差を生むエンジニアの武器
では、どんなエンジニアが社会から強く求められていくのだろうか。
一般的に、高所得のエンジニアは大きく2つに分類できる。
【高所得のエンジニア】①希少価値が高い専門スキルを保有するエンジニア②専門スキルと高いビジネススキルを併せ持つエンジニア
①でいう「希少性が高い専門スキル」とは、例えばビッグデータ、人工知能(AI)・機械学習、クラウド・セキュリティに関する実績をもつことだ(2022年1月現在)。
世界の潮流に沿った専門スキルを保有している人材は需要が非常に高い。にもかかわらず、その難関さゆえに、応えられる人材は多くない。
そのため、技術力で勝負したいのであれば是非チャレンジしたい分野だ。
とはいえ、今現在その専門分野に関わる業務に就いていないのであれば、現職で経験を積むのは難しいだろう。
なので狙うべき目標は、②の「専門スキルと高いビジネススキルを併せ持つエンジニア」である。
実際、高いビジネススキルを保有するエンジニア人材は、IT界隈で切望されている。
たとえば、「今のエンジニアの大半は、10年後には食えなくなる」と喝破する元マイクロソフト日本代表の成毛眞氏は、これから必要とされるエンジニアを以下のように表現している。
「自社のビジネスや事業はこうあるべき」というビジョンを持っていること
例えばある会社が人事系システムを新しくしたいと考えた時、求められるのは技術に詳しい人ではなく、「住宅手当や通勤手当を止めて、基本給を上げた方が社員のためになる。だからこのシステムを作ろう」といった理想を持つ人です。
出典:「10年後、大半のエンジニアは食えなくなる」マイクロソフト元社長・成毛眞が示す“日本衰退の未来”への備え
また、「Society5.0」社会の実現を見据えてDX化(デジタルを中心にビジネスモデルやビジネスプロセスを見直す改革)を推進する経済産業省でも、今後確保したい人材の要件の1つとして「デジタルで何ができるのかを理解し、プロジェクトをリードできる人」と定めている(太字は筆者注)。
- DX 推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材
- 各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DXの取組をリードする人材、その実行を担っていく人材
出典:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(2018年)
このようにみると、特定のフィールドで使うテクニカルスキルに詳しいだけでなく、クライアントのビジネスを深く理解し、自ら提案できるエンジニアがこれから先強く求められているといえる。
「技術力さえ高ければ、他は門外漢でもいい」は通用しなくなっているようだ。
実際、クライアントへのヒアリングや提案を担当するITコンサルタントと、開発現場に携わるSE/プログラマーの所得を比べてみると、両者の生涯賃金は約1億円もの差がある。コンサル系のSIerの方が、年収が高い傾向があると言えるだろう(※)。
※もちろん、両者の業務に優劣はない。どちらも開発には不可欠である。
このようにみると、技術力(テクニカルスキル)だけでなく、高いビジネススキルの保有が、今後も稼ぎ続けるエンジニアの要件といえる。
※参考:しごとウェブ転職|大手SIer年収・売上ランキングと選び方の4ステップ
デジタル時代に選ばれるエンジニアの「21世紀型ビジネススキル」
では、稼ぐエンジニアになるうえで、具体的にどのようなビジネススキルが必要になるだろうか。
国際団体ATC21sは、デジタル時代に必要なスキルを21世紀型ビジネススキルとして発表している。
※ATC21sとは…マイクロソフト・インテル・シスコシステムズ・メルボルン大学などが中心となって設立された団体
その中でも、以下の4つのビジネススキルを「自分の力で生きていける力」として定義している。
これらのビジネススキルは、開発フィールドに関係なく、どのプロジェクトでも発揮することが可能なものだ。
なおコミュトレでは、上記4つの力をかみ砕いて、以下のように定義した。
実際、「AIに代替されない仕事」として転職コンサルタントが挙げる業務をみても、
「相手の意図を汲み取り、臨機応援に対応する必要がある業務」
「他者とコミュニケーションをとりながら進める業務」
といったように、フォロワーシップ・メンバーシップ・リレーションシップ等の21世紀型ビジネススキルが必要とされている。
そのため、21世紀型ビジネススキルを身につけておけば、ほとんどの案件・プロジェクトで強く必要とされる人材になる。
その結果、所得や待遇が今以上にアップするばかりでなく、周囲から感謝され、より一層やりがいをもてるようになったりするのも間違いない。
技術力×ビジネススキルで、技術革新に負けない「一生涯の安泰」を得よう
今回は、これから先も稼げるエンジニアになるために、どんなビジネススキルを身につけていくと良いかご紹介した。
高所得をもたらす案件は、技術力だけで考えてもなかなか見えてこない。 所得とは、社会から必要とされ感謝された対価だからだ。
とはいえ、技術革新は日進月歩で目まぐるしく進んでいる。昔なら1年掛かった技術革新が数か月で達成されることも珍しくない。
そのため、技術力は常にアップデートしていかなければならないだろう。
一方で、フォロワーシップ・メンバーシップ・リレーションシップ等の21世紀型ビジネススキルは、組織・立場に関係なく常に求められる。
いち早く備えておけば、社会や技術動向がどう変化しても常に必要とされる人材となるだろう。
流動性の高いIT業界で一生涯の安泰を得るために、一生モノのビジネススキルを身につけてみてはどうだろうか。