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【開催レポート】【オンライン対談会】元ファーストリテイリング人事担当が登壇「コロナ禍の今だからこそ、原点回帰を。後悔しないキャリア構築法」 

コミュトレ編集部

ビジネススクール「コミュトレ」を運営する株式会社アイソルートは、2022年4月30(土)に、元ファーストリテイリング人事担当の方をゲストに招き、「働き方・キャリア構築」をテーマとした対談を行いました。

 

登壇ゲスト:松林一樹氏 株式会社ファーストリテイリング(以下、FR)に新卒で入社後、ユニクロ・GUの店長を歴任。その後、FR-MIC(社内人材育成機関)にて、新入社員・マネージャー・スーパーバイザーなど幅広い階層の社員教育に携わる。現在はIT系ベンチャー企業にて人事部長として、新卒・中途採用、労務、総務、広報、制度、教育など人材に関わる領域を統括している。 Twitter:@HR_kazukidesu  

コロナ禍をへて従来の常識が大きく変わりつつある今、これからのキャリア構築に不安を感じる方も多いはず。

ぜひ、これからのキャリア構築法の参考にしてみてくださいね。

 

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「業界一位は当たり前、目指すのは世界一」入社後に直面したユニクロの常識観

―就活のときにどんなことを考えていたのでしょうか?

牛丼チェーン店でバイトしていたのですが、チーム一丸となって売上を上げていくのが楽しかったんです。

そして、服が好きだったのでアパレル業界を考えたのですが、当時の業界常識でいうと、店長は売上の最前線に立っているにもかかわらず、低収入なことが多かったんですよね。

一方でFRは、店長=経営者、という考え方があったので、入社を決めました。

ただ、業界一位だけでなく、「世界でトップに立つためには?」という目標を掲げていたので、ハードな職場でしたね。

―実際、何が一番ハードだったのですか?

他社に勝つのは当たり前、そのうえで自分たちが世界一なのかどうかを問われつづけたことですね。

現場社員まで浸透させるために、トップリーダーだけでなく、エリアマネージャーや店長など隅々にまで考え方を落とし込んでいたのはFRの素晴らしいところだと思います。

―ハードワークにおいて、共感している人は長く続く傾向にありますか?

そうですね。会社のビジョンやプロダクトを広げていくことに共感し、熱狂的になれるかどうか、も大きな要素の1つですね。

 

「第一歩は“面白いかも”」仕事を楽しむための脳科学的アプローチ

―仕事を楽しむ重要を、どう考えていますか?

仕事を楽しむことは物凄く重要だと思います。仕事に費やす時間は、やはり人生の大半を占めていますよね。

「ワークライフバランス」という言葉があるように、一般的にはライフ(人生)とワーク(仕事)は別ものだと言われていますよね。でも、仕事と人生を区別することで余計にバランスをとることが難しくなる気がします。

むしろ「ワーク・アズ・ライフ」といいますか、仕事を人生の一部と考えてもいいのでは、と。たとえば僕だったら、家でゆっくりしているときに仕事のアイディアを考えたり、仕事中に家族のことを考えたりすることもあります。

―楽しくない仕事をどうしてもやらないといけない場合、どうすればよいでしょうか?

仕事していると、苦手なことも嫌いなこともありますよね。

僕の場合は、3年目のときはいわゆる「ポンコツ社員」だったのですが、そのときは自分の仕事をつまらないと思っていたんです。

でも、そのなかでも、自分が得意だったり成長につながりそうだと思えたりすること、あるいは好きだと思えることを探ようにしたんです。

たとえば、シフト作成はあまり好きな仕事ではなかったんですが、「もし自分が店舗スタッフのシフトをパーフェクトに組んだら、店舗の売上や会社に貢献できるぞ」と考えるうちに、楽しくなってきましたね。

とはいえ、どうしても苦手なことは得意な人にお願いするなどして、周りの人に頼むこともしていました。

―頼む力ってすごく大事ですよね。コミュトレでも「依頼する力」と定義していますが、それによってだいぶ自分のストレスはだいぶ軽減されそうですよね。でも、「出来ること、やれることを増やす」という意味で、今まで避けていたパワーポイントの資料作成を勉強してみたら、上達してきて、やっぱり楽しくなってきましたね。

上達するときのコツですが、好き嫌いという感情って人間の脳が作りだしているじゃないですか。で、脳はどうやって情報を取捨選択しているかというと、はじめは「好き、嫌い」という感情らしいんですよね。

で、大事なのは「好きになろう」とする姿勢、「上達したら面白いな」と感じることだそうなんです。

―人間関係でも、「なんかこの人合わないな」と思ってしまうと絶対仲良くなれないですよね。仕事も同じですね。

そうですね。『脳に悪い7つの習慣』という本なんかおすすめです。自分の脳みそって変えられるんだなと実感していただけるかと。

マネジメントにも使えるのが脳科学ですよね。人は感情で動くといいますが、人を動かすためには相手に好感をもってもらう必要があるので、相手の興味関心や志向を観察することも大事になりますよね。

<参考図書> ・林成之『脳に悪い7つの習慣』(幻冬舎 、2015) 

 

―脳科学を勉強することで、「いやだなー」と思う仕事や勉強に対する捉え方が変わるかもしれませんね。

「自分はどうしたいか、を常に考えつづける」やりたいことを見つける方法

―自分のやりたいことを見つけるためには、どうしたらよいのでしょうか?

まず、キャリアについては良い悪いはないですよね。先ほど出てきた「ミッション・ビジョンに共感する」ことは大事ですが、ともすれば滅私奉公になりやすいですよね。

僕の場合、自分の市場価値を考えた時に、ちょっと不安に感じたんです。

そして、何がやりたいんだろうと考えた時に、自分の力でビジネスをやりたいと考えたんです。でもそれはFRではできなかった。あれだけの大企業になると、個人規模のスモールビジネスと、兆単位の売上を目指す会社とでは、やはり方向性がずれてきますよね。

なので、下の子供がまだ産まれる前だったのですが、「4か月後には退職する!」と啖呵を切って背水の陣を引きました。

自分で事業を興せるようになりたいですし、人事という仕事はすごく尊いと思っていたので、その軸で転職活動して思い切ってFRを飛び出し、今(2022年4月現在)のベンチャー企業にたどり着きました。

―私自身も、会社がまだ小さかったときは会社を大きくすることに没頭していましたが、やはり30代を超えたあたりから「自分が何をやりたいんだろう」と、自分の価値観に目を向けるようになりましたね。

自分がやりたいことは、FRで働きながらも頭の片隅で考えてはいたんです。

で、「自分のキャリアをどうしたいのか」については、ずっと問い続けていくものだと思うんです。今までたくさんの人と会いましたが、自分のキャリアや将来をはっきり答えられる人はほとんどいませんでしたし、経営者でも「この事業をどうしよう」と悩んでいたりしますしね。

僕の場合、転職に踏み切ったきっかけの1つは、同じ職場内にいて尊敬していた先輩が転職してしまったことなんです。それをみて「僕もこのままじゃだめだな」と突き動かされたんですよね。

自分のやりたいことや環境など色々な要因が重なって、転職を決意しましたね。

―大きな変化のタイミングって、自分がどう生きていきたいのかを考えるきっかけになりますよね。実行するタイミングは別として、自分がどうしたら幸せになれるのかとか、やりたいことを定期的に考えることはけっこう大事ですよね。

そうですね。ただ、後悔しているのは「行動するのが遅かった」ということですね。

周りの人が動いてはじめて動いたので。過去には戻れないですが…

なので、最近はちょっとでもいいから小さな行動をはじめようと思って、Twitterをはじめてみたり。

それがきっかけで、今回この講演に呼んでいただくことにもつながりました。

―発信してみることで広がるご縁ってありますよね。

僕は実は、普段人見知りで出不精だったりするんですが、そういう自分は素晴らしい出会いを逃していたかもしれないな、と思うと少しもったいないとも感じていますね。

「決め過ぎなくていい」未来を拓くキャリア構築のコツ

―ありがとうございました。そろそろ1時間経ちますが、最後に視聴者の方にメッセージを是非お願い致します。

僕もキャリアについてはずっと悩んでいました。自己啓発本も100冊くらいは読んだかもしれません。

1つ思ったのは、ほっこりする自己啓発本はあまり参考にならなかったですね。

どちらかというと「どうやって行動していくのか」という方法についての本の方が役に立ちました。

そのときに大事にしているのは、自分の向かう方向性はざっくり決めつつも、柔軟性をもつことですね。

昔は、キャリアデザインがしっかりしていないといけないと思っていたのですが、最近は「そんなことはない」と思えるようになってきています。

やはり、10年20年先となってくると、どうなっているか分からないじゃないですか。クランボルツ博士は「計画的偶発性」と言ってますが、キャリアは自分で決められない要素や外部から決まる要因もあるので、変に決めすぎず、予期せぬ幸運がきたときにはちゃんとつかめるようにする、ということも大事ですよね。

ただし、なにも考えずにいるよりも、この1~2年どう成長したいのかはしっかり考えておくキャリアドラフトという考え方らしいんですが。

なので、「こうあるべき」に詰まっているときは、柔軟性に身を任せてもいいかなと思っています。

<参考図書> ・J.D.クランボルツ、他『その幸運は偶然ではないんです』(ダイヤモンド社、2005) ・金井壽宏『働くひとのためのキャリア・デザイン』(PHP研究所、2002) 

―たしかに。短期の方向性を決めていくと。それに加えて、最近は自分がやりたいことを周りに言うようにしているんです。そうすると、振られる仕事が変わってきているんです。

めっちゃわかります。大事ですよね。僕も、店舗現場から教育部署にずっと「行きたい」と言ってたら、ほんとに呼んでもらえましたし(笑)

Q&Aコーナー「教えて!松林さん」

このコーナーでは、視聴者から寄せられた質問への松林氏の回答を掲載しています。

Q.松林さんが一番大事にしていることは何ですか?

A.「成長」「挑戦」ですね。

自分の力をどんどん伸ばしていきたいという想いがありますので。でも、挑戦するときって、怖いじゃないですか。これはGUの社長に教えていただいたのですが、挑戦するときは「ちょっと怖いな、という方を選ぶ」といいです。たとえば、こういうイベント登壇も「ちょっと怖いな」と思いますが、やってみるとまた世界が広がりますよね。

Q.今一番FRで重視されているのはどんな人材像ですか?

A.今はFRから離れているのですが、元人事として言えば、基本的には「経営者」です。といっても 会社を経営している人だけを指すのではなく 、チームを率いて成果を出せる人材という意味ですね。

経営者になるためには、4つの力があります。それが「儲ける力」「変える力(現実を直視して自己変革する)」「チームを創る力」、そして一番大事なコアの力が「理想を追求する力」です。

自分が何を成し遂げたいのか、という志(使命)ですね。社長も「モチベーションではなく、“使命”で働きなさい」と言っていました。モチベーションはその時の気分によって上がり下がりしていまいますが、使命感は内発的動機を高めてくれます。なので、使命があるからこそ他3つの力が発揮されるということですね。

Q.自分の仕事はつぶしが利かないのですが、どうキャリアを創っていけばいいのでしょうか?

A.つぶしが利く・利かないという話は、どの仕事にも言えます。

どんな仕事であれ、その仕事の専門性1つだけでは通用しない世の中になってきていますよね。でも、抽象度を上げて「どんな能力が身に付いているのか」と考えていくと、他の仕事にも転用できるんじゃないかと。

たとえば、小売業の経験を「仮説に基づく論理的思考で問題解決ができる」といえば、企画やマーケティング、人事に使えるじゃないですか。でも特定のスキルだけと言ってしまうとつぶしが利かなくなるのかもしれません。

あとは、これからのキャリアでいえば、かけ算の時代になってきているかと思います。

僕だったら「営業×教育×人事」と横に転換していますが、どういうかけ算をしていくのかが大事ですよね。

というのも、その組織の中でキャリアを積んでいくと、狭き門になりますし、自分でコントロールできない運も入ってくるじゃないですか。

でも、他に転換してキャリアをかけ算していけば、どんどん希少な人材になっていくと思います。

今は「職種」ではなく「職能(どんなスキルをもっているか)」が問われる時代になってきているので、「自分の武器」といえるものをどれだけ増やせるかは大事だと思います。

<参考図書> ・藤原和博『35歳の教科書』(幻冬舎メディアコンサルティング、2009) ・トム・ピーターズ『トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦<1>ブランド人になれ!』(CCCメディアハウス、2000) ・島田紳助『自己プロデュース力』(ワニブックス、2009) 

 

Q.『経営者になるためのノート』のうち、柳井さんは特にどこを重視していますか?

A.その本は柳井氏が 約40 年近く経営をしてきて、経営者になるために必須の要件をまとめた本ですね。なので全部重要といえます。もともとは経営者教育の教科書として使われていたものでして、ファーストリテイリング社内ではそのノートに書いてあることをもとに社員教育しています。その本を一番使い倒している人は、FR内で一番出世しているといいますね。

Q.今35歳で異業種へのキャリアチェンジを考えているのですが、失敗を考えると怖いです‥‥

A.僕の場合、失敗の考え方が少し違うかもしれません。例えば「一緒に働く人が合わない」は失敗だと思うのですが、「自分の力が通用しない」はむしろ成長だと思っています。

Q.心理的安全性を確保する重要性がいわれていますが、リーダーや一般社員が行うべきことは何かありますか?

A.まず、心理的安全性の捉え方についてですが、ES(従業員満足度)を重要視することではないと僕は思います。むしろ、チームが目指す方向性や目標に向かうアクションが、全員にとって合理的・建設的に発信され、意思決定がなされている状態ですね。決して一人一人をヨイショすることではないです。

なので、優しい言葉に聞こえますが、実はちょっとシビアじゃないかなと思います。

もちろん、パワハラ・セクハラをしないというのは大前提ですが、意見を言いやすい雰囲気を創るのも大事ですよね。小さなことでいえば、不機嫌そうな顔をしないということとか。

たとえば、部下にとって上司に相談するのってけっこうハードルが高いじゃないですか。だから、上司の立場にいるのであれば、あえて暇なフリをしたりしますよね(笑)

参加者の声

ご参加いただいた方からは、キャリア・働き方に対するポジティブなコメントが寄せられました。

 

●成長につながるチャレンジをしてみようとおもいました。

●能力は掛け算というのが心に深く刺さりました。 今の職場でもう少し何かできないか考えてみるきっかけになりました。

●新しい事業を起こしたいと考えいたため、今日の話はとても参考になりました。

●仕事を楽しくするコツなど、即実践できるような情報が盛り込まれていたから。

●後悔しないキャリア形成を行う方法を学ぶことができた。次回も参加したい。

●話を聞いていて刺激を貰い、仕事に対して前向きな気持ちになりました。 どういう風にキャリアを積み上げていくのか、考えたいです。 素敵なイベントを企画してくださり、ありがとうございました。

●掛け算キャリアの考え方に賛同です。年齢が上がるにつれこのスキルが重要視されてくるからです。 今日のお話は、若い年齢の方だけでなく、幅広い年齢の人にも勉強になるお話でした。 これから自分の理想を「好き」を大切にして探していきます!

 

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!

 

スキルを高め、柔軟性を保ちながらキャリアをかけ算する

今回は、松林氏の経験をもとに、先行きが見えない時代のキャリア構築について伺いました。

そのポイントを簡単に振り返りましょう。

・自分のやりたいことを考え続ける ・一見つまらない仕事も、まずは「面白そう」から入ってみる ・1~2年先くらいまではしっかり計画を立てつつ、将来を決め過ぎない ・自分の能力・スキルを高め、できることを増やしていく 

是非、あなたのキャリア構築の参考にしてみてくださいね!

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1967年 東京都出身。 東京工科大学機械制御工学科在学中に、輸入商社のスタートアップに参加。 1996年 株式会社コミュニティネット入社。営業所長として、PCソフト及びBTOパソコンの販売、ISP、IP電話代理店など、新規事業を立ち上げる。 1999年 「日本を元気にする会社を創りたい」と株式会社アイソルートを設立(eラーニング製品の開発)。専務取締役として営業、開発、財務の各責任者を歴任。 2004年 同社代表取締役に就任。以降19年間連続黒字と最高売上高更新中。 2007年 新宿区優良企業表彰「経営革新賞」受賞。 2012年 日経トップリーダー「本当に強い中小企業ランキング」全国総合14位、IT業界2位に選出。 2024年 ダイヤモンド社から書籍『話せる、伝わる、結果が出る!コミュトレ』を発売し、紀伊國屋書店ビジネス書第1位、Amazonセールス営業本第1位を獲得。

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