提案・営業で活用できるビジネススキル

生命保険営業においてコミュニケーション能力が重要である理由

コミュトレ編集部

「コミュトレ」は、ビジネスコミュニケーション能力を体系的に身につけられる教育環境ですが、相談に来られるコミュトレ受講生のうち、1/3以上は営業職です。その中でも個人営業だと、生命保険(以下、生保)の営業の方とよくお会いします。

で、生保営業の方からたまに聞くのが「専門家として信頼されよう」という話。裏を返すと、「保険のプロとして見られないと、お客様はそもそも自分のプレゼンを聞いてくれない」ということです。

 

ただ、専門家として信頼されるって、言うほど簡単ではありません。受講生も「難しい」と思われている方が多いです。
例えば、さっきまで良い雰囲気でしゃべっていたのに、保険という言葉を出しただけで『あ、うち保険はもう入ってるんで』と一蹴されてしまった、といった苦い経験をしている方は多いですね。もはや専門知識を使う以前で、お客様と壁ができてしまっているわけです。

 

しかし、仮に営業を「相手のニーズを知り、それに合った提案をする」というコミュニケーション活動だと定義するなら、成績を出すためのコミュニケーション能力は、実は「正しい知識」と「反復訓練」によって、相当なレベルまで鍛えられます。

実際、コミュトレにはたくさんの生保営業の方がいらっしゃり、最初は結果が出なくて「自分は営業に向いていない」と半ばあきらめていた方や、もともと能力が高いのに、誤ったコミュニケーションの取り方をしていたことで結果が出ずに苦しんでいた方も、お客様との正しいコミュニケーションの取り方を理解したことで一気にブレークしていく様子をたくさん見てきました。

 

そこで今回は、私たちインストラクターがお会いしたお客様の事例をもとに、生保営業の営業成績に直結するコミュニケーション能力の身につけ方について、少し語りたいと思います。
成果を出したいすべての営業パーソンにとって、何かしら現状を突破するヒントになったら嬉しいです^^

では、さっそくまいりましょう!

 
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職業別に求められる コミュニケーション能力

「会話が上手い」彼が、お客様の心を開けなかった真の原因

とある30代男性の生保営業マンがいらっしゃったときのことです。

彼のご相談は「相手に上手く伝えられない」「相手の言っていることの真意がよくわからない」というものでした(ちなみにこういうご相談は、社会人にとって結構「あるある」です)。

なるほど、それではもう少し問題を分解してみようということで、彼と一緒に、いわゆる「セールスプロセス(※詳細な表現は諸説あり)」の図を描いて「具体的にどこで特にうまくいっていないと感じるんですか」と聞いてみました。

すると、「アプローチ(お客様との関係構築)~ニーズ喚起手前のところですね」と仰ったんです(図の黄色のマーカー箇所)。

 

会社から教わった順番でお客様に色々とヒアリングしているんだけど、どうも回答の真意がつかめず表面的な会話が続いてしまっている。説明するたびにお客様の顔がくもってしまい、なかなか次の商談につながらない、とのことでした。

しかし、実際にお話ししてみて思うのは、彼は会話がめちゃくちゃ上手なんですね。一体何に困っているんですかというくらい感じが良いし、表情も豊かで、しゃべりも滑らかです。

 

なので、現状把握のために、実際に私がお客様役となって、雑談~ヒアリングに入るまでのワークを簡単にやってみたんです。そうしたら、色々気づきを得られました。

確かに、彼は抜群に会話が上手い。物腰も柔らかく、私が話せば気持ちの良いリアクションを返してくれる。それに、積極的に質問も振ってくれて、会話を盛り上げようとしてくれました。

 

が、お客様役になりきっていた私は、最後の最後まで警戒心が解けないでいました。
なぜか。

「この方は生保の営業マンである」という意識がぬぐえなかったからです。

 

もっと言うと、「この方はこの会話のあとに、私に何か売ってくるんだろうな」という意識が残っていたので、常に彼に対して一歩引いていたんですよね。
ちなみに、彼に「どうして先ほどのような雑談をしたんですか」と聞いたら、彼は不思議そうな顔で「お客様と関係を構築しようと思ったら、お客様の話を真剣に聴くことが大事だって教わったので」と仰いました。

 

つまり、彼にとって「真剣に話を聴く」とは、「にこやかな表情で、積極的に質問を振ったりリアクションをとったりしながら会話を進めていくこと」だったのです。
確かにその認識は、ある意味正解と言えます。

 

これがもし、無表情&ノーリアクションだったら、いくら営業マンが「めちゃくちゃ真剣に聴いてます!」のつもりだったとしても、お客様からしたら「いやいや、雰囲気が怖いって」という心理になるでしょう。

ここで、お客様の立場に立って考えてみてください。

 

お客様は、目の前にいる彼がただの初対面の人ではなく「保険屋」だということを知っています。その場合、ある程度社会人経験を積んだ人なら、やっぱり心のどこかで「この先に営業が待ってるんだろうな、何か売られるんだろうな」と警戒心をもつと思いませんか。

一瞬、雑談で和やかな雰囲気になっても、実は心の中ではまだ警戒ラインを引いたままだったりします。で、その状態で営業マンの説明が始まろうものならどうなるか、皆さん想像がつくのではないでしょうか?

 

そのため、生保営業で見込み客とお会いしたときに最初にやるべきことは、
・雑談を一生懸命盛り上げる
・その方の人生背景を根掘り葉掘り聞く
ということではなく、

 

見込み客の警戒心を解き「この人だったら話を聞いてみてもいいかも」と安心してもらうことなんですね。

 

では、どうするか。

私は彼に、解決策として
「『自分はこれまでどんな人生を歩んできた人間なのか』『自分がなぜこの仕事を始めようと思ったのか』といったような、自分に関する情報をお客様に積極的に開示してみてはどうでしょうか」とご提案しました。そう、俗に「自己開示」といわれるノウハウです。それを聞いた彼は、ハッとしたような顔をして、「わかりました」とお帰りになりました。1週間後、彼から一本の電話をいただきました。

 

やや興奮した口調で、こう話してくれました。

冬木さん、先日の商談でアドバイスいただいた自己開示をやってみたんですよ。
これまでだったら、どんなに頑張っても客様の口数は減る一方だったんですけど…今回は自分から積極的に、自分の想いとか人柄とかをちょっとずつ出してみることにしたんです。
そしたら、お客さんも自分の話をしてくれたんです。お客様が歩んできた人生を聴いているうちに、気づいたら『この人に頑張って売ろう』じゃなくて『この人のために役に立ちたい!』って思えるようになっていて。
そのあとのプレゼンもすごい興味津々で聴いてくださったので、次のアポ(クロージング)も取れました!ここまで進められずにもどかしい思いをしていたので、すごい嬉しいです!

 

ああ、やはりこういったお声をいただくと、私もめちゃくちゃ嬉しいです^^

 

彼の経験は、「正しいコミュニケーションノウハウを正しく実行することで、お客様の対応は劇的に変わる」ということを、まさに証明してくださったのではないかと思います。

※ちょこっと補足
このメカニズムをちょっとだけ解説すると、私たち人間の心理には、相手から受け取ったものと同等のものを返したくなるという「返報性の法則」が働いています。そのため、自分から自己開示すると、素性がわかって安心してもらえます。その結果、お客様も無意識に「自分も開示しよう」と思い始めるのです。

 

生保営業の方にはお馴染みの「ファクトファインディング」の段階では、お客様の過去の人生や今後の将来像を聴いてニーズを掴めとよくいわれますよね。

 

しかし、お客様の立場に立つと、警戒心バリバリの状態で自分の個人情報をしゃべりたくなるかと言われたら、難しいのが本音です…(汗)

 

つまり、ニーズを把握するための会話がうまくいくのは「この人にだったら話してもいいかな」という前提あってのこと。その前提を作ることも、ビジネスにおけるコミュニケーション能力の一部なんです。そのためのノウハウの1つが、今回ご紹介した「自己開示」です。(実際はこういったノウハウがレベル別に50段階くらいあるわけですが、今回は紙面の関係上割愛します…。)

 
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「上手にしゃべれる人=コミュニケーション能力が高い人」ではない

ここまでの話を踏まえると、生保営業におけるコミュニケーション能力とは、つまるところお客様の立場に立つ力」と言えるでしょう。

 

ニーズがない人にとっては平凡な商品でも、ニーズがある人からすれば超魅力的に見えます。そう考えると、保険に限らず営業現場においては、「お客様に何を伝えた」よりも「お客様がどう思ったのか」がほぼ全てを決めると言えます。そして、お客様が商品の価値に気づいて「興味あるな」「欲しいな」と思えるかどうかは、

「商品の魅力」×「営業パーソンの営業力」

という2つの要素の掛け算で決まります。

 

 

たとえばiPhoneのように圧倒的な魅力があり、しかもそれが直感的に理解できるほどの商品であれば、営業パーソンの営業力はさほど必要ないかもしれません。
しかし、生命保険のように提案する側とお客様との間で情報の非対称性が大きく、かつ目に見えない高額商品であるなら、提案する側の能力が勝負のわかれ目といえるでしょう。

 

そう考えると、「コミュニケーション能力=お客様の立場に立って、お客様のメリットになるような新しいモノの見方を提供すること」ともいえます。一部の方が考えているような、単に「上手にしゃべる能力」じゃないってことなんです。

 

だから、私はインストラクターをしていて常に思います。コミュニケーション能力を身につけることの意味は、自分の営業成績とかコミッションのためだけじゃない。

 

一番は「お客様の人生をより豊かにするため」なんです。

 

とはいえ「お客様の立場に立つ」って言葉で言うのは簡単ですが、そこには多少なりとも難しさもあります。なぜなら、基本的にお客様は自分と全く違う価値観で生きている人だからです(ベースマーケットなら別かもしれませんが)。
なので、自分が良かれと思ってることがお客様にとっては良いとは限らないわけです。

 

だから、コミュニケーションに関する専門的知識と、それを使いこなすための反復訓練があったほうが、お客様に喜ばれる機会が格段に増えるということですね。

   

【まとめ】あなたのコミュニケーション能力がお客様の人生を変えるきっかけになる

さて、今回も色々とお伝えしてきましたが、いかがでしたか。

 

生命保険は、車や住宅と違って、お客様の人生を先々まで見据えた上でご提案をする商品ですよね。お客様がここから先の人生で出会うかもしれない大きなリスクからお客様を守るための素晴らしい商品のはずです。

 

しかし、目に見えない高額商品であるうえに、損害保険のように期限があるわけでもありません。なので、先延ばしにしようと思えばいくらでもできる商品、とも言えます。

 

つまり、「提案が上手くない営業パーソン」に出会ってしまうと、極端な話ですが、そのお客様はその生命保険の価値に気づかないままここから先の人生を過ごしてしまう、ということです。

 

逆を言えば、コミュニケーション能力を発揮することで、お客様に商品の本来の価値に気づいていただき、その方の人生を変えるきっかけをご提供できます。

あなたのコミュニケーション能力によって、お客様をより幸せにしていけるといいですね♪

 
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1967年 東京都出身。 東京工科大学機械制御工学科在学中に、輸入商社のスタートアップに参加。 1996年 株式会社コミュニティネット入社。営業所長として、PCソフト及びBTOパソコンの販売、ISP、IP電話代理店など、新規事業を立ち上げる。 1999年 「日本を元気にする会社を創りたい」と株式会社アイソルートを設立(eラーニング製品の開発)。専務取締役として営業、開発、財務の各責任者を歴任。 2004年 同社代表取締役に就任。以降19年間連続黒字と最高売上高更新中。 2007年 新宿区優良企業表彰「経営革新賞」受賞。 2012年 日経トップリーダー「本当に強い中小企業ランキング」全国総合14位、IT業界2位に選出。 2024年 ダイヤモンド社から書籍『話せる、伝わる、結果が出る!コミュトレ』を発売し、紀伊國屋書店ビジネス書第1位、Amazonセールス営業本第1位を獲得。

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