「上司として、どうやって部下と接したら良いんだろう」
「“部下を育てる”って、何をしたら良いんだろう」
このような疑問を抱えているマネージャーの方は、実は多いかもしれません。
上司として威厳のある態度・余裕のある雰囲気を保ちつつも、内心では上司としてのスタンスや部下との接し方に悩んでいる、でもなかなか人には相談できない…そんな状況に陥ったことはないでしょうか。
自分がプレーヤーとして活躍することはできても、そういった人材に部下を育てるとなると、今までとは全く違うスキルが求められます。
確かに、部下それぞれにあった育て方をしようと思うと、迷うことがあるのは当たり前ともいえます。
でも、そんなとき「これだけは外してはいけない」というポイントがわかっていたら、どうでしょうか。
この記事では、部下育成で絶対に外してはいけないポイントを3つお伝えしていきます。
部下育成の前提に始まり、優秀な部下を育てるためのポイントや、そのためにすべきことを知っていきましょう。
これさえおさえておけば、部下の育成に悩んだときに立ち返る場所ができるので、迷うことがなくなるはずです。
上司として一段階上のレベルへと成長を遂げたい方、必見です!
目次
【ポイント①】部下が自発的に動く状況をつくる
部下育成で外してはいけないポイントの1つ目は「部下が自発的に動く状況をつくること」です。(こちらの記事もご覧ください)
「部下が思うように動いてくれない」「言われたことしかやらない」「もっと積極的に意見を言って欲しい」と感じたことはないでしょうか?
このようなとき、「もっと自分から動いてみよう」と伝えただけで、部下が自分から仕事をできるようになるかと言われると、そうではありません。
ましてや、指示や命令によって部下を無理矢理動かそうとしても、反発を招いてしまうだけです。
上司は、部下に一番近い存在です。
部下をよく知っているからこそ、部下自身が「もっと自分から動きたい」「もっと仕事を頑張りたい」と思えるような環境を整えることが、重要な役割の1つとなります。
上司として、部下を組織に貢献できる人材に育てるためには、部下1人ひとりを戦力化し、チームとして成果を出し続けられるようにならなければいけません。
目先の目標達成のために、日々細かい指示を出し続け、叱咤激励し続けて部下を動かすのではなく、部下が自分から動くことで目標達成に向かえるように促していきましょう。
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【ポイント②】心理的安全性を高めて、部下が実力を最大限発揮できるようにする
続いてのポイントは、部下が実力を最大限発揮できるようにすることです。
どの部下にも強みがあり、個々が違う視点をもっています。
部下が言いたいと思うことをきちんと口にでき、自然と強みが活かされるようになれば、それは自然と成果に繋がります。
そうやってスキルや経験を積み重ねていく内に、段々と「言われたことに一生懸命取り組む」段階を超え、「自分から周りを巻き込む」「必要な助けを自分から求める」という段階に進んでいくのです。
ここで気を付けるべきポイント、それが、部下が「安心して仕事ができる」環境を整えることです。
「このような意見を言ったら怒られるのではないか」「今上司に相談したら迷惑ではないだろうか」と不安になったり委縮したりしている状態では、部下が自分のもてる力をだしきることはできません。
よって、「自分はこの職場に受け入れられている」「安心して、言いたいことをきちんと言える」と感じられるような状況を作る必要があります。
このような、周囲からの目線に対して不安をもたず、本来の自分を安心してさらけだし、それが受け入れられる雰囲気のことを『心理的安全性』といいます。
過度な緊張感やストレスから解放されることで、人は本来発揮できるパフォーマンスを存分に発揮できるのです。
心理的安全性の担保がより高いパフォーマンスに繋がることを示した実験が、かつてアメリカのGoogle社で実施されました。
同社では、2012年から『プロジェクト・アリストテレス』とよばれる、生産性向上計画が実施されています。このプロジェクトは、同社の人員分析部が、社員同士のコミュニケーションを中心に、各チームの仕事ぶりを徹底的に観察して分析することで、「より生産性の高い働き方」を提案することを目的に実施されました。その結果、最も生産性の高い働き方をしているチームは、『心理的安全性』が確保されているチームであることがわかったのです。
(New York Times「What Google Learned From Its Quest to Build the Perfect Team」,2016年)
以上をふまえると、組織・チームにおいて心理的安全性を保つことが、部下の成長・成果にも大きな影響を及ぼすことがわかりますね。
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【ポイント③】部下の価値観を理解して、安心感を与える
なぜ価値観を理解する必要があるのか
ポイント②でお伝えした心理的安全性が保たれている環境、つまり部下が安心して仕事ができる環境には、「自分が受け入れられている・認められている・理解されている」と感じられる雰囲気があります。
さらに、上司と部下間の心理的安全性を具体的に言うと、「上司は本当の自分をわかってくれており、認めてくれている」「自分は上司の本当の姿を知っている」といった感覚を部下がもっている状態になります。
「そんなことを言われても、部下が何を考えているかなんてわからない」と思う方もいるかもしれません。
だからこそ、日常的な何気ない会話の中で、部下の価値観を理解することが、3つ目のポイントになります。
上司と部下は、同じ空間にいたとしても、各々が目指すべき目標や仕事の精度などには異なる考え方をもっていることがあります。
「同じ組織にいるのだから同じ方向を目指しているに違いない」「皆が同じモチベーションで挑んでいるはずだ」という前提に立ってしまうと、部下が自分の意図と少しでも違う行動をとったときに、それが受け入れがたいものになるかもしれません。
だからこそ、そもそも部下は自分とは異なる価値観をもっているという前提に立ちましょう。
部下が何を重要と考えるのかを知ろうとする姿勢、それを尊重しようとする姿勢を上司の方から示すことで、部下は安心感を覚えます。
🌻 上司である自分とは異なる立場にいる部下を理解するために、「相手の立場に立つ」コツをおさえましょう
キャリア・アンカーを使って価値観を理解する
価値観とは多様なものであり、部下が10人いれば10通りの価値観があります。
それでも、参考となる指標をもっていれば、傾向を把握しやすくなります。
そこで、ここでは、他人の価値観を判断するための指標として『キャリア・アンカー(※)』をご紹介します。
キャリア・アンカーとは:
アメリカの組織心理学者エドガー・シャインが提唱した概念で、個人がキャリア選択においてどうしても犠牲にできない欲求・価値観・能力などを指しています。
個人のキャリア積極的定着促進要因といえるもので、一度形成されると変化しにくく、周囲が変化しても自己の内面であまり変わりません。
ちなみに、アンカーとは、船をしっかりと停留させる錨(いかり)を指しています。
キャリア・アンカーには、以下の8種類があります。
自分の部下の最も強いアンカーは、どれになるでしょうか?
(1) 全般管理コンピタンス | 組織の中で責任ある役割を担うこと
集団を統率し、権限を行使して、組織の中で責任ある役割を担うことに幸せを感じる |
(2) 専門・職能別コンピタンス | 自分の専門性や技術が高まること
特定の分野で能力を発揮し、自分の専門性や技術が高まることに幸せを感じる |
(3) 保障・安定 | 安定的に1つの組織に属すること
1つの組織に忠誠を尽くし、社会的・経済的な安定を得ることを望む |
(4) 起業家的創造性 | クリエイティブに新しいことを生み出すこと
リスクを恐れず、クリエイティブに新しいものを創り出すことを望む |
(5) 自律と独立 | 自分で独立すること
組織のルールや規則に縛られず、自分のやり方で仕事を進めていくことを望む |
(6) 社会への貢献 | 社会を良くしたり他人に奉仕したりすること
社会的に意義のあることを成し遂げる機会を、転職してでも求めようとする |
(7) 純粋なチャレンジ | 解決困難な問題に挑戦すること
解決困難に見える問題の解決や手ごわいライバルとの競争にやりがいを感じる |
(8) ワーク・ライフ・バランス | 個人的な欲求と、家族と、仕事とのバランス調整をすること
個人的な欲求や、家族の願望、自分の仕事などのバランスや調整に力を入れる |
人は全てのアンカーを少しずつもっており、1つのアンカーだけをもっているということはありませんが、その中で最も強いアンカーは1つです。
上司が部下のキャリア・アンカーを把握し、さらに理解を示すことができれば、部下との信頼関係を構築することができ、部下も安心して仕事をすることができます。
「リーダーの当たり前」と「部下の当たり前」は違うと心得る
経営コンサルティング会社識学が提供するメディア「識学総研」によると、リーダーと部下の「当たり前」が食い違っており、チーム運営がうまく行っていないケースは多いです。
そのため、「リーダーが当たり前だと思っていることは、部下にとってはそうでないかもしれない」と理解しておくことが重要です。
部下にとって何が難しいと感じるのか、指導なしでどこまでできるのか、など部下の状況を理解するためのコミュニケーションを怠らないようにしましょう。
参考:識学総研|チームがおかしくなる原因は、大体において「リーダーの当たり前」と「部下の当たり前」が違うから
まとめ:部下育成の鍵は、部下を理解すること
いかがでしょうか。今回は、部下の育成において外してはいけないポイントを3つお伝えしてきました。改めて、確認していきましょう。
【ポイント①】部下が自発的に動く状況をつくる
【ポイント②】心理的安全性を高めて、部下が実力を最大限発揮できるようにする
【ポイント③】部下の価値観を理解して、安心感を与える
トップダウンで命令をしても、理想を押し付けても、部下は動きません。
まずは上司である自分自身が部下を理解し、安心して動ける環境を作ることが大切になります。
価値観に絶対的な良し悪しはありません。
だからこそ、部下1人ひとりを理解し、認めようとする姿勢をもって、部下がやりがいをもって意欲的に仕事に取り組める状況を作りましょう。
そうすれば、チームとして、組織として、より大きな成果が出せること間違いなしです!
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